「サブスク時代」に問うKIRINJIの新サウンド

文化往来
2019/11/18 2:00
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緻密なバンドサウンドがコアな音楽ファンに支持されるKIRINJIが20日、新アルバム「cherish」(ユニバーサル・ミュージック)をリリースする。昨年デビュー20年を迎えたが、リーダーの堀込高樹は「回顧ではなく先に進みたい」と強調。エレクトロニクスやヒップホップの色彩を強めた、先鋭的な力作に仕上がった。

「世界的に音像への関心が高まっていることを意識した」と話すKIRINJIのリーダー、堀込高樹氏(11月11日、都内)

「世界的に音像への関心が高まっていることを意識した」と話すKIRINJIのリーダー、堀込高樹氏(11月11日、都内)

念頭にあったのは普及が進む音楽のサブスクリプション(定額配信サービス)だったという。「自分たちの曲が色々な曲とともに聴かれることを考えれば、古色蒼然とした印象を与えないものを作る必要があった」と堀込。これまでは意表を突くメロディー展開に持ち味があったが、新作では強力な低音と粘りのあるリズムが前面に出ている。「高校生の息子が聴いているダンスミュージックのすごい低音に触発された。今は世界的に音像への関心が高まっている。今回はエンジニアと協力して低音処理に力を入れた」

2016年の「ネオ」以降、毎回ラッパーを起用している。新作でも2曲で取り入れたが、「ラップにはリズム楽器の特性があり、打点(ビート)によってグルーブ感が出る」とその意図を説明する。饒舌(じょうぜつ)な楽曲のリズムをさらに複雑にしながら、ポップスとして全体を調和させた手際が聴きどころだ。

20日にリリースするKIRINJIの新アルバム「cherish] (C)ユニバーサル・ミュージック

20日にリリースするKIRINJIの新アルバム「cherish] (C)ユニバーサル・ミュージック

シニカルなユーモアとセンチメンタルな気分を撚り合わせる歌詞は今回もさえている。小学生の息子のTシャツの絵柄から着想を得たナンセンスな「Pizza VS Hamburger」、失恋した女性の胸中を切々とつづる「killer tune kills me」などに見る紋切り型ではない言葉選びは、知性派ミュージシャンの面目躍如といえる。

KIRINJIは1998年に堀込と弟の泰行の兄弟デュオとしてメジャーデビューした。だがメインのボーカリストだった泰行が2013年に脱退。"声"を失った打撃は大きかったはずだが、堀込はサウンドを大きく進化させながらKIRINJIを全く新しいバンドに作り替えた。兄弟時代の残り香を感じさせない今回の新作は、その歩みの集大成の感がある。

2020年2月から全国8カ所を回るツアーを予定。「アルバムは端正に作ったので、ライブでもその印象は損なわず、グルーブを一段と増した形で演奏したい」と意気込む。

(前田龍一)

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