米、ウクライナ外交に「裏ルート」 公聴会で高官証言

トランプ政権
2019/11/14 4:34
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【ワシントン=中村亮】米議会下院の情報特別委員会は13日、ウクライナをめぐるトランプ大統領の不正疑惑について初めての公聴会を開いた。ウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使とジョージ・ケント国務次官補代理はトランプ氏の側近が2020年の大統領選を優位に進めるため、同国政府に工作活動をしていたと主張した。テーラー氏の証言からウクライナ疑惑の概要を解説する。

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ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ氏の大統領再選の道具として同国が使われると懸念している

トランプ氏は7月25日にゼレンスキー氏と電話し、民主党のバイデン前副大統領に関する不正調査を要請した。ゼレンスキー氏は調査に着手すれば20年の大統領選に向けてトランプ氏を支援したとみなされると懸念していた。当時の世論調査ではバイデン氏が民主党の指名争いで首位を走り、トランプ氏の強力なライバルとみられていた。不正疑惑が浮上すれば人気が急落する可能性があった。

トランプ氏の要請は外国勢力に対する選挙支援要請を禁じる米連邦法に抵触する恐れがある。証人のケント氏はトランプ氏の顧問弁護士ジュリアーニ氏がウクライナ政府に対し「政治的動機に基づく調査」を働きかけていたと証言。身内の政府高官も選挙目的との見方を示したことで、連邦法違反の疑いが深まる。

 
政治活動のために軍事支援を停止するのはばかげている

テーラー氏はトランプ氏の側近が軍事支援と引き換えにバイデン氏の不正調査を迫ったと証言した。テーラー氏はロシアの脅威の最前線に位置するウクライナにとって、米国との安保協力が死活問題と考えていた。軍事支援に条件を設けるトランプ氏の側近の方針を「ばかげている」と批判した。側近は首脳会談もバイデン氏の調査が条件としていた。

米議会下院の公聴会で証言するウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使(13日、ワシントン)=AP

米議会下院の公聴会で証言するウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使(13日、ワシントン)=AP

トランプ氏が政権の専管事項である外交を利用してバイデン氏をおとしめようとしたとすれば「大統領職権の乱用」にあたる恐れがある。ニクソン元大統領は米連邦捜査局(FBI)捜査官などで構成する秘密部隊「ホワイトハウスの水道配管工」を利用し、政敵の機密情報を集めた。情報機関を政治的利益のために悪用したとして議会はニクソン氏の弾劾決議案をまとめたことがある。

 
ウクライナ外交を担当する「裏ルート」が存在した

バイデン氏の不正調査をウクライナ政府に働きかけたグループをさす。トランプ氏の側近であるジュリアーニ氏やマルバニー大統領首席補佐官代行、トランプ氏への大口献金者のゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使が加わっていた。テーラー氏は「裏ルートはウクライナを支援する米国の長年にわたる政策から逸脱していた」と批判した。

軍事支援停止を主導したのも裏ルートだ。マルバニー氏の指示だとして米行政管理予算局(OMB)職員は支援停止を関係省庁に突然通告した。テーラー氏は「同僚とともに仰天した」と当時を振り返った。トランプ氏が側近を操って、バイデン氏の不正調査をウクライナ政府に確約させようとした疑いが深まった。

 
トランプ氏はウクライナよりもバイデン氏の調査を気にかけていた

駐ウクライナ大使館職員がソンドランド氏から聞いた話として、テーラー氏が証言した。7月25日の米ウクライナ首脳の電話協議の翌日にソンドランド氏はウクライナ政府高官と面会。その後にソンドランド氏はトランプ氏に電話し「ウクライナは(調査を)進める準備ができている」と伝えた。両氏がバイデン氏の調査をめぐり緊密に連絡を取っていたことをうかがわせる。

大使館職員がトランプ氏にとってのウクライナの印象を尋ねると、ソンドランド氏は「(ウクライナよりも)バイデン氏の調査を気にかけている」と答えた。トランプ氏がウクライナの安全保障などを軽視し、政治的利益を優先しているととられかねないエピソードだ。

 
私はトランプ氏と直接話したことはない

テーラー氏はトランプ氏の側近が軍事支援などの見返りにバイデン氏の調査を求めたと断言したが、トランプ氏本人の意図や言動は把握していないと証言した。トランプ氏を擁護する与党・共和党は「直接の目撃者ではない」と指摘し、トランプ氏本人に関する証言は臆測だと訴えた。

民主党はトランプ氏が不正行為に直接関与した証言を引き出す必要がある。大統領弾劾の根拠は大統領本人の言動をあげなければ説得力を欠くからだ。弾劾訴追について世論の支持が思い通りに広がらない可能性もある。

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