カリブの楽園カンクン、1000億円開発で観光頼み脱却

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コラム(ビジネス)
中南米
2019/11/14 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

メキシコ政府は東部ユカタン半島のカリブ海に面する国際リゾート地、カンクンで総額10億ドル(約1080億円)に上る大型施設の建設計画を発表した。宿泊施設に大型の会議場を併設する。観光関連では過去30年間で最大規模の投資額となるプロジェクトだ。観光地として世界的に有名な同地は国際会議、研修など「MICE」の需要も増えており、大型開発でさらに競争力を高める。

メキシコ東部のリゾート地、カンクンに建設予定の大型ホテルと会議場の完成予想図(メキシコ観光省提供)

メキシコ東部のリゾート地、カンクンに建設予定の大型ホテルと会議場の完成予想図(メキシコ観光省提供)

政府によると大型施設プロジェクトの名称は「グランド・アイランド・カンクン」。メキシコのデベロッパー、ムラーノが出資するとともに全体の計画を統括する。プロジェクトに必要な資金の調達にはメキシコ外国貿易銀行(Bancomext)のほか、外国の銀行も参加するとしている。土地の取得費用や建設費などで総額10億ドルを見込んでいる。

プロジェクトは宿泊施設と会議場に分かれている。宿泊施設に関しては2段階に分けて開業していく計画で、第1期は22年、第2期は24年としており、客室総数は3千と大規模イベントにも対応できる。会議場は22年に開業するとしている。カンクンは単なるリゾート地ではなく、国際会議も多く開かれている。プロジェクトではコンベンション需要も取り込む考えだ。

大型開発計画だけに雇用へのインパクトも注目されている。政府の試算では工事中は直接雇用で4千人、間接雇用で7500人の合計1万1500人の雇用創出を見込んでいる。完成後、施設の運用段階では直接雇用3500人、間接雇用で5千人の合計8500人分の雇用が生まれるとしており、プロジェクトを通じて2万人分の雇用を目標にしている。

ロペスオブラドール大統領は自らの出身地でもあり比較的開発の遅れている東部や南部の発展を公約にしている。これらの地域は遺跡やビーチなどの観光資源が豊かなだけに、特に観光業を通じての開発に期待を寄せている。自らも観光客の多いカンクンを起点にしてユカタン半島の遺跡を結ぶ観光鉄道「トレン・マヤ」の建設計画も打ち出している。

ロペスオブラドール氏は「観光分野に関して投資は順調に増えており、雇用を生み出している」としたうえで、観光業は富を生み出すだけでなく分配機能も持っており、経済を活性化させることにすばらしい役割を務めている」と話している。

メキシコ経済はロペスオブラドール氏が打ち出した新空港建設中止や油田鉱区の入札禁止などによる混乱に加えて、トランプ米大統領による通商関係の不安定化によって製造業の投資が落ち込んでおり、雇用や消費に大きな影響を与えている。その中で観光業は治安の悪化やカリブ海の海藻問題などの影響はあるが比較的順調に成長を続けている。

すでにカンクンや周辺には大型のホテルや会議場はあるが、米国の休暇シーズンを中心に客室などが不足するケースもあり、需要は大きいと言える。そんな中で老朽化施設の改装なども積極的に実施されており、今回のプロジェクトと併せて、今後もカンクンの人気は続きそうだ。

■1~8月訪問外国人客、8%増の2980万人

米国をはじめとした外国客のメキシコ訪問は堅調に推移している。メキシコ観光省によると1~8月の外国人来訪者数は2980万人と前年同期比8%増となった。世界的な景気の落ち込みや、国内では過去最悪の殺人事件件数を記録するなど治安が悪化しているが、多くの世界遺産やビーチなどの観光資源に恵まれたメキシコの観光業の強さは健在だ。

同期間の外国人による消費額は171億ドルと12%増。増加率でみれば、来訪者数以上に消費額が増えており、1人当たりの滞在単価が上昇していると言えそうだ。ホテルや飲食などの業界にとっては追い風となるデータだ。

もっともメキシコの観光業界を巡っては逆風も吹いている。最大の顧客とも言える米国をはじめ世界的に経済成長が減速し始めている。メキシコ国内の状況をみれば新政権に入っても殺人事件件数は高水準のままで、治安改善の兆しは見えていない。首都メキシコシティの空港は本来の離着陸の許容量を超えた状況が続き、遅れは慢性化している。

それでもカンクンをはじめとしたビーチや遺跡が同時に楽しめる場所として、メキシコは引き続き外国人の人気を保っているようだ。観光省は通年でも前年比5%増の外国人訪問者数を見込む。メキシコ経済界にとっては数少ない明るいニュースといえる。

(メキシコシティ=丸山修一)

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