「和牛」知財保護、法整備へ動く 受精卵不正持ち出し

2019/11/13 14:13
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和牛の受精卵などが中国に不正に持ち出された事件は、日本の有力な輸出農産品である和牛を守る法規制がなく、遺伝資源が水面下で海外流出している実態を浮かび上がらせた。農林水産省は法制度を整備し、受精卵や精液などを知的財産として保護する考え。権利保護の枠組みや罰則などについて、専門家を交えて本格的な検討を始めた。(小安司馬)

「権利侵害を規制する仕組みが必要だ」「締め付けすぎると現場の畜産家が萎縮する」。10月25日、農水省で開かれた専門部会の初会合で、知財を専門とする大学教授や弁護士、家畜改良事業団の理事らが議論した。オブザーバーとして法務省などの担当者も参加した。

この事件で大阪府警は、男らが輸出時に検疫を受けなかったとして、家畜伝染病予防法違反容疑を適用した。同法は本来、伝染病のまん延を防ぐのが目的。和牛の受精卵や精液の海外流出を直接罰する規定がなく、"苦肉の策"で関係者の摘発にこぎ着けたが、法整備の必要性が浮き彫りになった。

これを受け、農水省は和牛の遺伝資源の流通管理に関する検討会を5回開催。「和牛の遺伝資源は家畜改良の成果として高い価値があり、知財として保護する仕組みが必要」との指摘を受け、法制度を具体的に検討するために専門部会を立ち上げた。

知的財産とは発明や著作物、営業秘密などで、特許法をはじめ様々な法律で保護されている。農作物は種苗法に基づく品種登録で育成の権利が保護されるが、和牛などの遺伝情報は同じ品種でも個体間のばらつきが大きく、権利化が難しいとされる。そこで想定されるのが、品種ごとに権利を定めるのではなく、流出などの権利侵害行為に規制をかける方法だ。

不正競争防止法では、事業活動に有用な情報で公然とは知られていない「営業秘密」の流出を罰する規定がある。畜産家の間で広く流通する和牛の遺伝資源を現行法で営業秘密とみなすのは難しかった。今後、遺伝資源の知財としての位置づけや罰則などが議論の焦点となりそうだ。

農水省は流通管理規定の強化についても議論を続けており、受精卵や精液が入った「ストロー」への生産情報表示の義務化や、国・都道府県の定期的な調査による情報把握などを提案している。 農水省の担当者は「長年の改良の成果に『ただ乗り』されれば畜産家に利益が入らなくなり、モチベーションが低下する」と指摘。「幅広い意見を聞き、法制度整備で資源流出を防ぎたい」と話している。

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