NTTコミュニケーションズは12日、レート保証型の外国為替情報サービス「Home Currency Anywhere(HCA)」を発表した。11月下旬より提供を開始する。
インバウンド(訪日外国人)ビジネスなどをターゲットにしており、外貨による価格表示と決済が容易になるという。シンガポールのフィンテックスタートアップ企業M-DAQ(エムダック)との協業で提供する。
NTTコミュニケーションズの東出治久経営企画部ビジネスイノベーション推進室長(撮影:山口健太)
増加する訪日外国人需要を背景に「通貨というデータの価値交換により、顧客体験価値を最大化できるのではないか」(NTTコムの東出治久経営企画部ビジネスイノベーション推進室長)として、新サービスのHCAを発表した。NTTコムによる「Smart Data Platform」と連携するアプリケーションとして提供する。
HCAは常に変動する外国為替レートを24時間固定する「レート保証」、ネット通販の返品などを想定した90日間の「リファンドレート保証」という2つの特徴を備える。NTTコムによると、これらの特徴を備えるサービスは日本初という。すべての機能は既存の決済システムなどに組み込みやすいAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として提供するとしている。
実際のレート保証はM-DAQが独自のアルゴリズムにより提供する。
対応通貨は主要通貨に加え、国内で需要が伸びているアジア太平洋地域の通貨を加えた22通貨とする。レート保証には為替変動リスクもある。「M-DAQのビジネスモデルは場合によっては損が出る日もあるが、トータルでプラスにできる仕組み」(東出室長)と説明した。
なおNTTコムは、M-DAQに出資したことも発表した。出資金額などは非公表だが「株式の過半数を取得するような規模ではない」(東出室長)と補足した。
HCAを利用する企業は、NTTコムが手数料を乗せた外国為替レートを基に外貨による価格をエンドユーザーに提示。エンドユーザーはクレジットカードによる外貨決済などと異なり、最終的に支払う金額を把握した上で買い物ができることがメリットになる。
ターゲットユーザーとしては飲食店、小売店、ECサイト、旅行会社、電子マネーオペレーターなどを挙げた。すでに多数の案件が動いているという。
NTTコムにとっては、システムの基本利用料に加え、外国為替の利用額に応じたトランザクション課金が収益になる。HCA単体の目標収益は25年度に50億円、30年度に130億円を掲げた。
NTTコムが上乗せする手数料など、外国為替レートの詳細は非公開としているが「クレジットカード会社による外貨決済時の手数料と比べても、魅力的なレートを出せる」(東出室長)と自信を見せた。
(ライター 山口健太)
[日経 xTECH 2019年11月12日掲載]