「プロ野球の持ち込みがあった。明日にはレターを出す。すぐに準備しろ」。ソフトバンク財務部の後藤芳光が社長の孫正義からこんな密命を受けたのは球界が再編騒動に揺れる2004年夏のことだった。福岡ダイエーホークスの買収が証券会社から持ち込まれたのだ。
条件は球場とホテルやショッピングモールとのセット。20年のリース契約で年間のコストは50億円。軽く1000億円を超えるディールになることは間違いない。当時、ソフトバンクはブロードバンド「ヤフーBB」を普及させるため通信用モデムを無料でばらまき赤字のまっただ中。後藤は「確信犯的にレターの準備をしなかった」と言う。
■球界参入、ファストリ・柳井は反対
すると孫が烈火のごとく怒った。孫に20年仕え、現在はソフトバンクグループ全体の金庫番と球団社長を兼ねる後藤が「過去に3本の指に入るほどの怒り方だった」と振り返るほどだ。
後藤が「まずは役員会で議論する必要があると思います」と返すと、孫は「それは後でやるからすぐに意思表示しろ」と譲らない。後藤はあわてて法的拘束力のないノンバインディングでレターを書いた。
ファストリの柳井はソフトバンクの球界参入を「むしろイメージが悪くなる」と反対した
球界参入に疑問を持ったのは後藤だけではない。社外取締役の柳井正(ファーストリテイリング会長)も…
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