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再生エネ100%の東京五輪 木材や食品にも環境配慮

武蔵野の森総合スポーツプラザの屋上には太陽光パネルなどの再生エネ設備が取り付けられた(東京都調布市)

競技会場や選手村、放送センターなどで使う全ての電気を再生可能エネルギーでまかなう。2020年東京五輪・パラリンピックは大会史上初めての試みに挑む。大会中に排出する二酸化炭素(CO2)も実質ゼロにする目標を掲げる。クリーンな五輪を目指す東京大会で取り組む先進的な動きが広がる一方で、その背後にある課題も見え始めてきた。

「Be better, together より良い未来へ、ともに進もう。」――。東京大会では持続可能性コンセプトとしてこんな言葉を打ち出している。世界最大規模のスポーツイベントとして、その影響が環境や社会、経済に広く及ぶことから、大会の準備や運営で環境に配慮しようとの考え方だ。

例えばそのうちの一つ、気候変動の対策では大胆な再生エネの活用を掲げる。メイン会場となるオリンピックスタジアム(東京・新宿)や有明アリーナなどの都内7カ所の会場に太陽光や地中熱といった再生エネの発電設備を取り付ける。電力会社を通じて太陽光や風力などを使って発電した電気も調達して使う。それでも足りずに普通の電気を使う分は、再生エネを使ったとみなす証書を購入するなどして実質、再生エネ100%の達成を目指す。

企業の「寄付」でCO2排出ゼロ

東京大会のCO2排出量は約293万トンと、リオデジャネイロ大会やロンドン大会より抑える。一部の競技会場にはIT(情報技術)を駆使して建物のエネルギー消費を効率的に管理・制御する「BEMS(ベムス)」と呼ぶシステムを導入。選手村に設置するエアコンなどの家電製品は、レンタルやリースしたものを使うことで、新規購入に比べCO2排出量を抑える。

それでも排出する分があるのにどうして実質ゼロか。カギは企業の「寄付」にある。

メダルには使用済みの携帯電話などから取り出した再生金属が使われる

企業が省エネ設備の導入などでCO2を減らした分を「削減分の権利」とみなす「クレジット」の仕組みを活用し、その権利を寄付するよう東京都などが企業に呼びかけている。集まった分を、大会で排出するCO2とすべて相殺する「カーボンオフセット」の考え方で実質ゼロにする。

選手に贈られるメダルにも再生金属を使う。「都市鉱山」と呼ばれる、使用済みの携帯電話や廃家電などから金属を取り出し、メダルの原料にする。東京大会で必要なメダルの枚数は金銀銅合わせて5千枚。東京都や環境省などが連携し17年から回収した。

2020年の東京五輪・パラリンピックでは、大会中に使う食品や木材などの製品ごとに「こういうものを使えば環境を破壊しにくい」といった調達基準が設けられている。そのルールが守られているか疑わしい場合に通報する窓口を大会史上、初めて設けたのも特長の一つだ。五輪での取り組みは、その後の消費者や企業の行動にもつながっていくだけに、目標を骨抜きにしないための仕組みで挑戦しようとしている。

有明体操競技場には持続可能な方法で調達された木材のみが使われている(東京都江東区)

「調達基準を満たしていない木材が競技会場の建設に使われている可能性がある」。2018年4月に開設した通報窓口。19年6月末までに8件の通報が寄せられ、その中にはこんな内容の通報もあったという。

この件を巡っては大会組織委員会が東京都と共同で調査を実施。有明体操競技場(東京・江東)などで使われている合板について、原料のマレーシアの伐採地を管理する事業者や、工場を運営する企業に対して現地で聞き取りした結果、生産や管理方法に問題は見つからなかったという。

調達基準の認定品目は過去最多

調達基準は木材のほかにも選手村で提供される食品やせっけん、観戦チケットに使われる紙など、大会の準備や運営のために組織委員会が調達するあらゆる物品について定められる。今回の大会からはパーム油にも基準を設けるなど、認定品目としては過去最多になるという。

例えばパーム油は、原料のアブラヤシの農園を造ろうと森林を切り開く動きが相次ぐなど、熱帯雨林の破壊問題が世界的に注目されている。そのため非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議」などが認証した、違法な開発で作られたアブラヤシを使っていない製品を採用する。

ただ、調達基準だけでは不十分との指摘もある。パーム油では国際的な認証に加え、比較的基準の甘いマレーシアやインドネシアの国内認証を取得していれば、調達してもよいことにしている。

水産物でも認証取得の計画を掲げている漁業者が生産したものも許容される。そのため「生態系への影響などに配慮できていないものが紛れ込む可能性がある」と世界自然保護基金(WWF)ジャパンの三沢行弘シーフード・マーケット・マネージャーは指摘する。

今回の東京大会の環境対策全般についてWWFジャパンは「全体的にレガシー(遺産)としてふさわしい方針」と評価する。ただ、目標達成には、選手や観客がごみの削減や分別に協力するなど、一人ひとりの意識にいっそう働きかけていくことも必要になってきそうだ。

五輪で設けられた調達基準は大会以降の企業活動にも大きく影響する。ロンドン大会では五輪をきっかけに認証を取得した水産物の導入が加速した。五輪での環境配慮の取り組みが広く知られれば国民の関心も高まる。表面的な「持続可能性」ではなく、その後の社会の意識改革につなげられるかも東京五輪の成否のポイントの一つといえる。

(坂本佳乃子)

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