「目が慣れる」仕組み解明 大阪大、難病治療に応用も
暗い所や明るい所に急に入っても、しばらくすると目が慣れる明暗順応と呼ばれる働きの分子レベルの仕組みを、大阪大の古川貴久教授(神経発生学)らのチームが解明し、欧州の科学誌電子版に12日までに発表した。仕組みを利用して視細胞の光に対する感度を下げられれば、光の刺激で悪化する難病の網膜色素変性症などの治療薬開発につながると期待されるという。
網膜にある桿体(かんたい)視細胞には、目に入った光を情報として伝えるトランスデューシンというタンパク質があり、暗い時ほど、光を受け取る外節と呼ばれる部分に多く集まる。
研究では、外節へのトランスデューシンの移動を、Klhl18という酵素が制御していることを解明。この酵素は、暗いと活発に働いてトランスデューシンを外節に動かす。明るいと働きが抑制され、トランスデューシンは視細胞の細胞体に移動する。こうして光の感度を上げ下げし、明暗順応を可能にしていた。
Klhl18が働かないようにしたマウスは、トランスデューシンが外節にあまり移動せず、光刺激が少なくなり、視細胞が変性しにくくなった。Klhl18の働きを抑えられれば、光から網膜を保護でき、視力低下などの症状が出る網膜色素変性症や加齢黄斑変性の進行抑制薬や予防薬の開発が望めるとしている。〔共同〕