台風19号1カ月 記録的水害、影響なお深刻

台風19号
2019/11/12 2:00
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浸水した車両基地に並ぶ北陸新幹線の車両(10月13日、長野市)

浸水した車両基地に並ぶ北陸新幹線の車両(10月13日、長野市)

各地で記録的豪雨をもたらした台風19号の上陸から、12日で1カ月。死者数は90人で5人が行方不明となり、浸水被害は300近い河川の流域に及んだ。土砂災害は884件と1つの台風としては記録のある1982年以降最多。住宅被害は9万棟を超え、企業活動や農業も大きな損害を受けた。今も各地で2千人以上が避難生活を送る。台風21号などの影響により千葉県などでは10月25日に大雨が降り、再び町が泥水に飲まれた。繰り返す豪雨は大水害がもはや想定外でないことを突きつける。

■企業活動 工場再開できず、新幹線廃車で損失148億円

記録的な大雨による被害は広範囲で企業活動に影響した。JR東日本は長野市内の車両基地で水没した北陸新幹線の10編成すべてを廃車にすると発表した。JR西日本保有分を含め損失額は148億円。

台風通過後も浸水が続いた郡山中央工業団地(10月14日、福島県郡山市)

台風通過後も浸水が続いた郡山中央工業団地(10月14日、福島県郡山市)

食材工場の被災で東北や北関東などの約240店舗が一時休業を強いられたラーメン店運営の幸楽苑ホールディングスなど、外食や小売り分野も直撃を受けた。

生産活動の影響も深刻だ。SUBARUは部品メーカーの被災で国内唯一の四輪車工場、群馬製作所(群馬県太田市)を数日間操業停止した。太陽誘電も福島県伊達市の子会社が浸水した。日立製作所系やパナソニックも同県郡山市の工場が被災し、操業を再開できていない。

家族経営など小規模事業者で、廃業を迫られる事例もすでに出ている。経済活動に与えた被害の全容はまだ明らかになっていない。

■避難生活 1万棟超が全半壊、住居の確保急務

避難所で過ごす人たち(10月15日、長野市)

避難所で過ごす人たち(10月15日、長野市)

総務省消防庁によると、台風19号と続く21号などによる大雨で、11日時点で住宅1万1千棟以上が全半壊し、床上浸水も3万1千棟を超えた。内閣府によると、8日時点で約2800人が避難所で生活しているが、被害を受けた自宅に住むことができず、親戚宅などに身を寄せている被災者はさらに多い。

被災地はこれから寒さが本格化する。千曲川の堤防が決壊して多数の家屋が浸水被害を受けた長野市で10月末、今回の被災自治体で初となる仮設住宅の建設工事が始まった。今後は仮設の建設だけでなく、公営住宅の無償提供や市負担による民間住宅の借り上げなど、被災者が安心して住める場所の確保が急がれる。

広範囲に及ぶ被災地では道ばたに災害ごみが積み上がり、片付けを手伝うボランティアも不足している。廃棄物処理などを広域で支援する取り組みも必要だ。

■鉄道 復興の象徴再び不通、11路線が一部運休

台風19号の被害で宙づりになった三陸鉄道リアス線の線路(10月15日、岩手県山田町)

台風19号の被害で宙づりになった三陸鉄道リアス線の線路(10月15日、岩手県山田町)

国土交通省によると、台風やその後の大雨の影響で、在来線の7事業者11路線が11日時点も一部区間で運転を見合わせている。

2011年の東日本大震災の復興のシンボルとして、19年春に8年ぶりに全線が復活した岩手県沿岸の「三陸鉄道リアス線」も、盛り土が流されるなどして再び不通に追い込まれた。福島県と宮城県を結ぶ「阿武隈急行」や、長野県上田市の「上田電鉄」など、7路線で再開の見通しが立っていない。

■河川 140カ所で堤防決壊、想定区域を広げて備え

復旧作業が進む決壊した堤防(10月18日、宮城県丸森町)

復旧作業が進む決壊した堤防(10月18日、宮城県丸森町)

台風19号により阿武隈川など国管理の7河川を含む71河川140カ所の堤防が決壊した。

増水した水が堤防を乗り越える越水や排水不良による浸水被害をもたらした河川は8日時点で300河川近くに上った。

続く台風21号や低気圧による大雨でも34河川で被害があった。小規模河川の氾濫が多発したため、国土交通省はこれまで流域に住宅や企業が多い中核都市の河川を中心としていた浸水想定区域の設定対象を拡大し、備えを急ぐ。

■観光 箱根の温泉供給停止、57カ所いまも

台風19号の大雨による土砂崩れで配管が壊れ、温泉供給ができなくなった旅館の浴槽(10月30日、神奈川県箱根町)

台風19号の大雨による土砂崩れで配管が壊れ、温泉供給ができなくなった旅館の浴槽(10月30日、神奈川県箱根町)

秋の行楽シーズンを迎えていた観光地を台風と大雨は直撃した。

台風19号による総雨量が1000ミリに達した神奈川県箱根町では、土砂崩れなどで交通が寸断され、現在も同町内の2割にあたる宿泊施設57カ所に温泉を供給できていない。全面復旧は22日までずれ込むという。アクセス道路が崩落した長野県須坂市の米子大瀑布(よなこだいばくふ)のように、かき入れ時のはずの各地の紅葉の名所も観光客の足は遠のいたままだ。

■農林水産 損害額2200億円超え、全容把握はまだ

地面に落ちて泥にまみれた収穫前のリンゴ(10月15日、長野市)

地面に落ちて泥にまみれた収穫前のリンゴ(10月15日、長野市)

台風19号とその後続いた大雨による農林水産業の被害は38都府県に及んだ。

コメ収穫のピークは過ぎていたが各地で田畑が浸水し、農地の被害は1万8千カ所を超えた。長野・千曲川流域では収穫期を迎えていた特産のリンゴが落果し、果樹も折れた。農林水産省によると、農林水産業の被害額は8日時点で2200億円を超えた。全容は判明しておらず、3000億円を超えた2018年の西日本豪雨以来の被害規模となりつつある。

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