実力100%発揮 ラウンド・メンタル・テクニック(下)
■「ヴァーチャル・リレープレー」
ヨッシー 帯同コーチとのチームプレーはこの辺にしておいて、もう一つの「ヴァーチャル・チームプレー」もご紹介しましょう。それは駅伝方式のチームプレーです。「ヴァーチャル・リレープレー」といってもいいです。どういうことかというと、これもあくまで空想の世界ですが、ティーショットからホールアウトまで1つのボールを駅伝の「たすき」のようにつないでいくものです。具体的にいうと、ティーショットの落としどころにチームメートが待っていて、そのチームメートにボールを渡すようにティーショットを打つわけです。そしてパー4なら2打目はグリーン上にいるチームメートにボールを渡します。これを各ホールすべてで行って18ホールを完走していくわけです。

──駅伝方式のチームプレーですか? これは日本人のメンタリティーには合っているかもしれませんね。ナイスショットではなくボールをつなぐことを目的化するのですね。
ヨッシー そうです。ナイスショットしようとすると緊張します。でもボールを次のチームメートに渡そうと思うと「ボールを打つ」のではなく「ボールを運ぶ」というイメージになります。キャッチボールをすると相手の捕りやすいボールを投げようとしますよね。それと同じようにティーショットやセカンドショットを打つわけです。
──ゴルフではドライバーでショットするときに、野球ならばバッティングと同じ気持ちで打とうとしてしまいますよね。ホームランを打つつもりで飛ばそうと思い切り振ってしまう。だからあちこちの方角に飛んでいってしまうのかもしれません。そうではなくて守備をしている選手のように、仲間にボールを投げるように打つということですね。
ヨッシー そうです。守備をする野手の気持ちでボールを打つということです。単にボールをターゲットに打とうとするのではなく、ボールを受け取る人がいるとイメージしてその人が捕りやすいようにボールを打つわけです。次の人につないでいく、渡すというイメージです。ジュニアたちはイメージ力が豊富なので、この駅伝方式の「ヴァーチャル・リレープレー」はものすごく効果を発揮します。
──でも、ミスショットをして次のチームメートに渡せなかったら「ごめんなさい」という気持ちになって、かえって落ち込みませんか?
ヨッシー 大丈夫。次に待っているチームメートはプロゴルファーで、どんな悪いライからもスーパーショットでリカバリーしてくれる、と思えばいいんです。イメージの世界ですから次に待っているのはタイガー・ウッズだと思ってもいいわけです。もう少し身近に考えて、石川遼くんやあなたが好きな女子プロでもいいです。できればミスに寛容な優しそうな人にしたほうがいいですね。そうすれば深いラフに入れようが、ガードバンカーに入れようがニコニコしながら、次のショットを打ってくれます。


──なるほど。イメージの世界ならタイガー・ウッズとチームを組めるわけですね。そうなれば心強いしラウンドも楽しくなりますね。
ヨッシー その通りです。そうして、次のショットも同じように、自分の好きなプロが待つグリーンに打てばいいわけです。ボールをただ打つのではなく、渡していくという気持ちがあれば、おのずとコントロールの良いショットを打つことができます。スコアも自然に良くなってしまうというわけです。
──今日はすぐにでも実戦で使える4つのラウンド・メンタル・テクニックを教えていただきました。「頭の中の練習ラウンド」も「始動スイッチを入れる」も「ヴァーチャル・チームプレー」「ヴァーチャル・リレープレー」も目から鱗(うろこ)が落ちる内容でした。早速次の月例会で試してみたいと思います。
■ラウンド・メンタル・テクニック結果報告
取材の4日後に開催されたホームコースの月例会で4つのラウンド・メンタル・テクニックを実戦投入してみたので、感じたことも含めてリポートしたいと思います。
まず試合の結果から報告すると、アウト43・イン43でグロス86、ハンディキャップが20なのでネットは66、なんと6アンダーで準優勝してしまいました。ここ半年くらいスランプで90をなかなか切れなかったのですが、あっさりと90を切れてしまったので驚きです。ショットは相変わらず不安定でミスショットも多かったので、今回の好結果はラウンド・メンタル・テクニックの効能のおかげだと考えています。
何が普段と違って良かったのかというと、ミスをしてもミスが連続せずに次の1打でリカバリーできたことです。例えばパー4でグリーン手前の花道からアプロ―チしたところザックリして3オンならずのケースでは、普段ならがっかりして、良くても4オン2パットのダボ、悪いと3パットしてトリプルをたたいてしまうのですが、この日は4打目をピンそばに寄せて1パットのボギーに収めることができました。
またせっかくパーオン、それもバーディーチャンスにつけたのに3パットしてボギーをたたいた次のホールで、3オン1パットのパーであがることができました。普段なら3パットのボギーをたたいたホールを境にどんどん崩れてしまうところです。
4つのテクニックのどれが良かったのかというと、合わせ技の複合的な効果だろうと考えています。前日の夜寝る前に行った「頭の中の練習ラウンド」では、ミスショットをして危険ゾーンに打ってしまったことを想定しながら18ホールを行いました。それが功を奏して本番でミスショットしたときにも焦らず淡々とプレーできたと思っています。反省点としてはベッドに入ってから行ったので、目がさえてなかなか寝付けなかったことです。例えばお風呂に入りながら行うなど、もう少し早い時間に行ったほうがよいと思いました。
「始動スイッチを入れる」も良かったと思います。特にミスをしたあとは「グラウンディング呼吸法」と「ぴょんぴょんジャンプ」でリセットしました。ミスしたあとはどうしても焦って浮足立つ感じになるのですが、それを「グラウンディング呼吸法」によって「地に足を着ける」感じでプレーできました。「ぴょんぴょんジャンプ」は1打ごとに行っていると効果が薄れるように感じられたので、ここぞというときに限定したほうがよいかもしれません。
「ヴァーチャル・チームプレー」は正直にいうと少し懐疑的に思っていたのですが、18ホールを終えてこれが一番効果があったのではないかと考えています。特にミスのあとにリカバリーショットを打てたのは、短い時間で冷静に気持ちの切り替えを行えたからです。これも信頼できる友人が帯同コーチを引き受けてくれたおかげです(もちろんヴァーチャルですが)。
また、4つめの駅伝式チームプレーである「ヴァーチャル・リレープレー」では石川遼くんを相方に選びました。特にセカンドショットではグリーン上の遼くんにボールを渡すつもりで行った結果、アイアンショットの精度が大きく向上したように感じました。そして本当に遼くんと一緒にチームプレーをしているようで、いつも緊張してネガティブになってしまう月例会も楽しくラウンドすることができました。
4つのラウンド・メンタル・テクニックのコツはジュニアのようにイメージ力を豊かに保つこと。本当にゴルフはイメージ力が大事だと実感した次第です。
(文:並木繁、写真協力:ヨッシー小山、協力:東宝調布スポーツパーク)