災害続発、弱る地方河川 予算・人手不足で対策遅れ

台風19号
2019/11/11 11:26
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3日、宮城県丸森町を流れる阿武隈川支流の河川敷から1台のドローン(小型無人機)が飛び立った。川の流れを遮るように横たわる大木、両側から決壊した堤防……。台風19号の被害調査で現地に入った東北大大学院の田中仁教授はドローンのカメラがとらえた被害の様相に目を見張った。「本流に比べ、支流の被害が大きすぎる」

10月12日に東日本を縦断した台風19号は各地に「100年に1度」の記録的大雨をもたらし、1日で421ミリの雨が降った丸森町では大規模な浸水被害が発生した。1カ月がたっても、泥水につかった住宅の片付けはまだ途上だ。

同町に災厄をもたらした阿武隈川は過去に氾濫を繰り返し、国が重点的に整備を続けてきた河川の一つだ。町内では国が管理する阿武隈川の本流部分で破堤や越水は確認されなかったものの、県が管理する新川など3つの支流の計18カ所で堤防が決壊した。

国内の河川は河川法に基づき、防災上重要とされる部分を国が、それ以外を都道府県や市町村が管理する。国土交通省によると、台風19号で決壊した国や都道府県管理の河川堤防は71河川の140カ所。そのうち国管理は7河川の12カ所にすぎず、被害は都道府県管理の河川に集中していた。

3日、東北大大学院工学研究科の田中仁教授は宮城県丸森町で、台風19号で決壊した阿武隈川支流をドローンで撮影した(同教授提供)

3日、東北大大学院工学研究科の田中仁教授は宮城県丸森町で、台風19号で決壊した阿武隈川支流をドローンで撮影した(同教授提供)

国は2020年度までの3カ年で河川も含めたインフラ補強を重点的に進めるが、国が管理する河川でさえ、堤防整備率は約7割にとどまる。

河川の氾濫に備え、被害想定をもとに住民の避難場所などを明示した「ハザードマップ」の作製も、国は各自治体に促している。台風19号の被害を受けて対象を広げる方針だが、これまで多くの中小河川は対象外だった。都道府県や市町村が管理する中小河川は備えが間に合わず、今回の甚大な被害につながった。

背景に自治体の置かれた厳しい状況がある。宮城県は15年12月に「災害に強い川づくり緊急対策事業」を策定。堤防補強などに着手したが、河川課の担当者は「東日本大震災の復旧も終わっておらず、災害が起こるペースに追いつかない。いつ整備できるか分からない川もある」と打ち明ける。

判断のもとになるデータの把握も十分とはいえない。阿武隈川流域の福島県郡山市では管理する104河川のうち、水位計を設置しているのは2河川のみ。原因は予算や人手不足で「今回の台風で、どの川がいつあふれたか正確には分からない」(河川課)という。

地球温暖化などを背景に水害のリスクは年々高まっている。国交省の統計によると、18年に氾濫危険水位を超えた国や都道府県管理の河川は475河川で、14年(83河川)から4年で5倍以上に増えた。日本の南の海水温が上昇し、強い勢力のまま列島を直撃する台風も多くなっている。

「気象災害のリスクは高まりつつある」。気候変動に詳しい木本昌秀東京大教授(気象学)は警鐘を鳴らす。「極端な気象現象が起こりやすくなるなど、もはや過去の経験は当てにならない。命を守るためにどう行動すべきか、一人ひとりが考えるときに来ている」

東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から12日で1カ月。地方と都市で、水害に対する備えは万全なのかを検証する。

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