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表情和らいだ八村 スター選手と相対、素の自分に
スポーツライター 丹羽政善

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2019/11/11 3:00
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26日のスパーズ戦を終え、報道陣の取材に応じるウィザーズの八村=共同

26日のスパーズ戦を終え、報道陣の取材に応じるウィザーズの八村=共同

ずっと、八村塁(ウィザーズ)の表情が硬かった。

記者会見でも感情を消す。たまに頬(ほお)を緩めるが、それは愛想笑いに近い。かといって、ぞんざいに取材に応じるわけではない。

「じゃあ、ここでやろうか」

開幕戦当日(10月23日)午前、練習後にウィザーズの広報が指定した八村の取材場所はゴール裏の通路。人一人がすれ違える程度の幅しかなく、そこに30人を超える日米のメディアが殺到し、幾重も人垣ができた。そんな状況にも八村は表情一つ変えず、何台ものテレビカメラの前で飛び交う質問を次々にさばいていく。

そつがない。早口で言葉をつなぐ。6月の米プロバスケットボールNBAドラフト以来、こうした状況が続き、すっかりこなれてきた。

もっともそれを成長とみるか、仕事とみるか。いずれにしてもその様子は、およそ八村らしくなかった。

米ゴンザガ大の2年生だった今から2年ほど前、試合後に彼の小学校の頃の話になった。

「陸上で全国大会にもいったんですよ。富山県代表として」

短距離で?

「僕、長距離に見えます?」

八村はそのとき、人懐っこい笑みを向けた。以来、その表情がスタンダードとして刷り込まれた。

こう言って驚かせたことも。

バスケットとの向き合い方の話になり、「ここまで来たら、人生をかけてのこと」ときっぱり言った八村。では、留学を決断したときすでにそこまでの覚悟があったのかと聞くと、はにかみながら言った。

「いや、そうでもなかったんですけどね」

えっ、違うの?

「ハイ!」と取り繕っておけば、丸く収まる話。しかし、違うことは「違う」と否定した。

正直な発言、自分の弱い部分もさらす

わかりやすく言ってしまえば、正直なのである。

「もし、ああなるって分かっていたら、僕は(米国留学を)しなかったなって思います」

バスケットで奨学金をもらってゴンザガ大へ留学したが、来た頃はむしろ、勉強漬け。授業の単位を取ることはもちろん、練習、試合に出るには、一定以上の成績が求められる。しかし、その授業を理解する前提の英語が分からず、精神的にも追い込まれた。

その苦しさを振り返っての一言だが、そこまで正直に言ってしまうと、後に続こうという高校生らの意欲を削ぎかねない。二の足を踏む子もいるかもしれない。その程度の覚悟では無理だよ――。発言の意図をそう解釈することもできるが、おそらく、文脈は異なる。

さらに八村は、弱い部分もさらした。

2年生の時のある試合。途中出場したものの、ディフェンスのミスが続き、すぐにベンチに下げられた。

「あっち(のオフェンス)は複雑すぎて、自分が何をやっているのか、わかんないぐらいになっちゃった」

サイドラインのコーチからはしきりに指示が飛んだが、それすら理解できなかった。

「コミュニケーションのところでも、コーチも難しいことを言い始めたりするので」

この頃、「(ミスをすると)積極性がなくなったりするっていうのはありますね。でもやっぱ、自分で言うのもおかしいんですけど、ちょっとシュートをミスしたりとかしたら、そこで急に縮こまっちゃう部分がある」とメンタルのもろさも認めている。

「どうしてもここを抜けなければいけないと、自分でも思います」

上辺だけの言葉では、決してなかった。

注目高まり発言力の大きさに戸惑いか

話を戻すと、開幕からしばらく、八村は素顔や、言いたいことを封印しているようにも映った。また、決して弱みを見せようとしなかった。

たとえば、開幕3試合は3ポイントシュートを一本も決められなかったが、そのことを聞かれても、「感覚的にはいい感じ」と取り合わなかった。フリースローが少ないことにも、「シーズンが長いので。僕もどうやってプレーしているのか、調整中なので無理して、いくこともない。別に気にしてないです」と淡々と答えている。

自信に裏付けられた言葉とも受け取れるが、どうしても違和感が残った。

その裏には、何があったのか。急に注目されるようになって、自分の発言力の大きさに戸惑っていたのか。あるいは、自分の発言がどう伝わるのかという怖さを感じ、警戒していたのか。もちろん、緊張感もあったかもしれない。結果は出ていたが、日々、移動も含めて慣れないことばかり。気持ちに余裕がなかったのかもしれない。

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