法人税下げ競争に歯止め OECDが最低税率で論点整理

税・予算
経済
2019/11/8 21:41
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経済協力開発機構(OECD)は8日、世界各国の法人税について「最低税率」を設定する制度の論点案を公表した。企業誘致のための税率引き下げ競争をすれば、国の予算編成などに深刻な影響を及ぼしかねないとの懸念が背景にある。海外での税負担率が最低税率を下回る企業には、本国が追加課税する仕組みを検討しており、産業界や専門家の意見を広く求めていく。

OECDは海外での税負担率が最低税率を下回る場合に、本国が追加課税する仕組みを検討する

各国が統一した最低税率の検討を進めるのは、企業誘致のための税率引き下げ競争や優遇税制の乱立がおさまらないからだ。たとえばアイルランド(法人税率12.5%)やシンガポール(同17%)などは、低税率を売りの一つとしてアップルなど巨大IT(情報技術)企業などの拠点を誘致してきた。こうした動きに引きずられ、ここ10年、日米英など主要国でも法人税率を引き下げる動きが強まっている。

ドイツやフランスが議論を主導してきたが、トランプ米大統領が税逃れをしている米企業への批判を強めて税制改革を実施。米企業が海外にプールしている所得を自国に戻させるため、最低税率制度に似た仕組みを導入した。一部の企業が適切に納税していない状況を改めるべきだとの認識が高まり、議論が前進し始めた。

16年に「パナマ文書」が公開され、タックスヘイブンを使った税逃れに関する膨大なデータが明るみに出たことも各国の税務当局などの背中を押している。

OECDが検討する仕組みは、企業の海外子会社の税負担率が「最低税率」を下回れば、その分の所得を親会社に合算して本国の税務当局が追加課税するというものだ。

最低税率の数値は15%前後になるとの見方が多いが、OECDは今回、具体的な数値を示すことを見送った。論点案ではまず制度を導入するうえで解決すべき課題をまとめた。

1つ目は、さまざまな国で事業をするグローバル企業の税負担率の計算方法だ。具体的には「全世界での平均値を取る」「国・地域ごとの負担率で判断する」などの選択肢を示した。

たとえばあるグローバル企業のA国拠点の税負担率が25%、B国は14%、C国が10%だった場合。仮に最低税率が「15%」だと、全世界方式なら税負担率は約16.3%となるため、追加の課税は避けられる。一方、国・地域別方式ならB国とC国は追加課税される。

アイルランドなど低税率国は全世界方式を支持するほか、米国は既に全世界方式を採用している。一方、独仏などは税率引き下げ競争の抑止効果が薄まることを嫌って国・地域別方式を支持している。

2つ目の課題は、新ルールの対象範囲を配当やライセンス料収入などの「受け身」の所得に限るか、現地でのビジネスを通じて稼いだ所得も含めるかだ。受け身の所得に限ると制度の効果が薄まるため、主要国の当局は所得を区分けすべきでないとしている。

OECDでの最低税率の議論には134カ国・地域が参加しており、2020年末までの最終合意を目指している。制度の根本的な部分でまだ対立が残っており、最低税率の具体的な数値を決める段階でもさらなる対立も予想される。

日本企業からは「最低税率や制度設計によっては、日本での税負担が増える可能性がある」と懸念する声も出始めている。20年の合意に向け、各国と産業界の間で当面せめぎ合いが続きそうだ。

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