動画配信、ディズニーにジレンマ 稼ぎ頭に影響も

2019/11/8 16:31
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動画配信サービス「ディズニープラス」の開始まで1週間を切った(写真は8月のファンイベントでの告知)

動画配信サービス「ディズニープラス」の開始まで1週間を切った(写真は8月のファンイベントでの告知)

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ウォルト・ディズニーの動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」の開始まで1週間を切った。7日には地域の拡大や配信動画が見られる端末などを発表し、話題づくりに余念がない。ただ、動画配信を強化すれば、稼ぎ頭の従来型のテレビ放送にも影響を与えかねず、同社のジレンマも垣間見える。

7日に開いた2019年9月期の決算会見の冒頭、ボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)は10分間にわたり、動画配信について話し続けた。16年のストリーミング技術企業の出資に始まり、「Hulu(フールー)」のてこ入れ、西欧での展開計画や米アマゾン・ドット・コムの端末「ファイアTV」での視聴に対応したことまで話題は多岐にわたった。

19年9月期の通期業績は動画配信を中心とする「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」事業の売上高は93億ドル(約1兆円)。内部取引の消去を考慮しない状態で全体(696億ドル)の13%だが、拡大を狙う。営業損益は18億ドルの赤字で、12日のディズニープラスの開始を前にコンテンツや宣伝への投資を積み増す同社の意気込みがうかがえる。

ディズニープラスは500本の映画と7500本のドラマを集め、米国の動画配信サービスの「本命」と目される。アイガー氏はディズニープラスについて「4年間の計画と組織変革とハードワークの集大成」と話す。

ディズニーの現在の稼ぎ頭は「メディアネットワーク」と呼ぶ米国でのテレビ事業だ。傘下のケーブルテレビ向け放送局が受け取るライセンス料や地上波の広告収入からなり、売上高の36%、営業利益の50%を占める。利益ベースでの貢献度は、日本で「ディズニー」と聞いてイメージする映画やテーマパークの事業よりも大きい。

だが、収益環境は年々厳しくなっている。米調査会社イーマーケターによれば、ケーブルテレビや衛星放送といった「有料テレビ」を契約する世帯数は18年に9030万世帯で、5年前と比べて1千万減った。米ネットフリックスなどの躍進で最近は年300万~400万ずつ減り、ケーブルテレビを契約したことがない「コードネバー」も増加中だ。23年には有料テレビの契約は7270万世帯に落ち込むと見られている。

こうした中でディズニープラスは環境変化を乗り越える武器となる。ただ、企業として完全に配信の時代へカジを切ったとは言えない。ディズニーはスポーツを配信する「ESPN+」と呼ぶサービスを提供しているが、同じブランド名のケーブル局の放送内容と比べると限定的。ESPNは数あるケーブル局のなかで最もライセンス料が高いことで知られ、今ある収益基盤を守りたいとの意識も透ける。7日の会見でもアイガー氏は「(ケーブルと配信の)両方を成長させたい」と述べるにとどめた。

米大リーグ機構(MLB)のニューヨークヤンキースの試合を流すケーブル局にアマゾンが出資を決めるなど、今後はスポーツの分野でもネット配信が加速していく可能性は高い。ディズニーがテレビを取り巻く環境をどう分析し、次の動きに出るか。4年がかりで準備してきたディズニープラスが離陸する今、向き合わざるを得ない課題となる。

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