野生動物の農業被害防げ 「鳥獣管理士」全国300人超に

2019/11/8 10:30
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野生動物による農業被害を防ぐ専門家を育てようと、宇都宮大教授らが創設した民間資格「鳥獣管理士」の取得者が全国に広がっている。養成講座も開かれ、資格取得者は今年1月時点で34都道府県の315人。鳥獣害対策は行政だけでは限界があり、資格を認定する鳥獣管理技術協会(宇都宮市)は「地域に密着し、住民を支援する専門家が必要だ」としている。

鳥獣管理士の養成講座で行われた現地実習(9月、栃木県栃木市)=共同

▽現地実習

「あそこに足跡が見えます」。9月中旬、栃木県栃木市で開かれた養成講座の現地実習。講師役の鳥獣管理士が指をさした先には、イノシシのものとみられる足跡がいくつもあった。イノシシは防護柵を乗り越えてしまうことがあるとの鳥獣管理士の説明に、15人の参加者は真剣な表情で聞き入った。

鳥獣管理士は、宇都宮大や栃木県が2009年、社会人や自治体職員を対象に始めた鳥獣害対策の人材育成プログラムを基にスタート。農作物の被害防止に必要な知識や技術の程度に応じて1~3級まであり、防護柵の設置指導経験や猟友会の捕獲活動への協力、学会への参加などを「単位」と認定。一定数を取得して試験に合格すれば、昇級できる仕組みだ。

▽住民一体

受験資格が得られる協会の養成講座は、動物の生態を学ぶ座学や、現地で対策を考える実習も用意。正確な知識や現場経験を重視し、即戦力の育成を目指しているのが特徴だ。東京都や大阪府でも始まり、本年度は初めて熊本県で開いた。

協会の事務局長を務める宇都宮大の高橋俊守教授(地域生態学)は「受験者には地域に貢献したいという、シニア層も多い」と話す。鳥獣害対策は、地域住民が一体となって草刈りや見回りを続ける必要もあり、「対策を通じて地域社会を再構築することにもつながる」と説明する。

▽被害深刻

鳥獣管理士が全国最多の栃木県(112人)では、鳥獣被害に悩む市や町から要請を受けた県が鳥獣管理士を現地に派遣。住民を対象に勉強会を開き、動物が隠れやすい場所を地図化したり、動物に侵入されにくい防護柵の設置方法を指導したりする。こうした対策で大きな被害を免れている地域もあるといい、県も「異動がある行政職員と違い、継続的に地域を見守れる」と評価する。

野生動物による農業被害は深刻化しており、全国の被害額は18年度で約158億円。中でも野生イノシシは、感染が拡大する豚コレラのウイルスを媒介しているとされ、対策が急務だ。

高橋教授は「高い能力を持つ鳥獣管理士を養成し、対策の正しい知識を普及させたい」と強調した。〔共同〕

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