カンボジアで政情緊迫 野党指導者の帰国巡り攻防

2019/11/8 2:10
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サム・レンシー氏はバンコク行きの航空機に搭乗できなかった(7日、パリ)=ロイター

サム・レンシー氏はバンコク行きの航空機に搭乗できなかった(7日、パリ)=ロイター

【プノンペン=大西智也】カンボジアの政治情勢が緊迫してきた。フランスに亡命中の野党指導者サム・レンシー氏が7日、カンボジア独立記念日の9日に合わせタイ経由で帰国を試みたが、パリで航空機への搭乗を拒否された。カンボジア政府の要請を受けたタイが入国を拒否したため。同氏は別の経路を模索しているが、フン・セン政権は周辺国に身柄拘束を要請するなど政敵の帰国を断固阻止する構えだ。

サム・レンシー氏はフランス・パリの空港でタイ国際航空から搭乗を拒否された。記者団に対し「搭乗が許可されず、大変ショックで失望している」と述べた。タイのプラユット首相はこれに先立ち「東南アジア諸国連合(ASEAN)には内政不干渉の原則があり、他国には干渉しない」と述べ、入国を拒否する姿勢を示していた。

サム・レンシー氏はカンボジアにおける「民主主義の復興」を呼びかけ、政権を支える軍部にも離反を促している。今回の帰国計画ではタイに入国後、支援者とともに独立記念日の9日にカンボジアに陸路で入国する予定だった。だが、フン・セン首相は入国すれば「即逮捕」すると警告。ASEAN各国にも身柄の拘束を要請し、タイとの国境にも軍を派遣するなど警備を大幅に強化していた。

サム・レンシー氏はカンボジアの旧最大野党、カンボジア救国党(CNRP)の党首を務めた。30年以上首相の座にあるフン・セン首相の政敵として知られ、政権側と対立してきた。有力な野党指導者として、今もカンボジア国内で一定の支持がある。2015年に名誉毀損で逮捕状が出ており、救国党は17年に解散に追い込まれている。現在はフランスでの亡命生活を余儀なくされていた。

カンボジアへの帰国を目指していた救国党のム・ソクア元副党首も6日夜、マレーシアで入管当局に一時、拘束された。マハティール首相は「ASEANでは他国の内政に干渉しないことが原則」と拘束理由を明らかにした。既に解放されたが、国外追放になる見通しだ。

カンボジアの国会(下院)はフン・セン首相が率いるカンボジア人民党(CPP)が全議席を占めている。野党の弾圧に欧州連合(EU)は懸念を示し、武器以外の全品目を無関税でEUに輸出できる「EBA協定」の見直しを検討中。フン・セン政権が野党指導者の入国を事実上阻止したことで、20年2月の決定に影響を与える可能性がある。

ASEANの政治体制は民主主義や王制、一党独裁などがあり、宗教や民族などが入り組んでいる。内政不干渉を原則としており、全会一致で経済や政治の方向性を決めてきた。ASEAN各国がフン・セン政権の強権を事実上、支持するのもそうした理由がありそうだ。

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