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名門ゼロックス、規模に活路 HPに買収提案
縮む事務機市場、戸惑う投資家

エレクトロニクス
北米
2019/11/7 22:15
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ゼロックスは物言う株主の影響を受けてきた(写真は前CEOのジェフ・ジェイコブソン、2017年)=ロイター

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【ニューヨーク=中山修志】富士フイルムホールディングス(HD)による買収を蹴った米事務機器大手ゼロックスが早くも動いた。売上高で6倍の同業最大手HPに対して買収を提案した。「小が大をのむ」規模を追求する戦略だが、テック産業は米グーグルなどGAFAが台頭し、スタートアップを軸にしたイノベーションが進む。老舗のゼロックスとHPが再び存在感を示せるのかどうか。ゼロックスの一手に市場には戸惑いもみられる。

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6日の米株式市場でHP株は取引開始直後に一時18%高と急騰し、その後は上げ幅を縮め、前日比6%高で取引を終えた。ゼロックス株は4%高だった。HPは6日の声明で「ゼロックスから打診を受けた」と認めた。「(ゼロックスと)事業統合の可能性を協議してきた」と明らかにし、「株主の利益の最大化につながる方法を熟考し行動する」とコメントした。

株式市場での価値を示す時価総額はHPが3兆円規模とゼロックス(約8900億円)を上回る。ゼロックスによる買収額は3兆円規模になるとみられ、小が大をのむ構図だ。再編への期待で両社の株を買う動きが先行したが、「買収規模の大きさに加え、(事務機器の)市場全体の縮小という課題が残る」(JPモルガン・チェース)との声も少なくなかった。

株式市場に懐疑的な見方があるのは、世界的なペーパーレス化の中で、規模拡大を目指す買収の効果が見極めにくいためだ。米調査会社のIDCによると2018年のプリンター・複合機の世界の出荷台数は、前年比1%減の9900万台で縮小傾向だ。ゼロックスの売上高は前年割れが続く。HPはゲーム向け高機能パソコンや3Dプリンターが寄与し、業績は堅調だが、汎用プリンターの販売苦戦を背景に10月に9000人の人員削減を発表した。

規模拡大でコストを削減すれば、利益率の改善などを見込める。ただ2000年代以降、グーグルのような若い企業がイノベーションをけん引してきた。老舗のゼロックスとHPが合従連衡で新たな技術革新を生み出せるかどうかは不透明だ。

買収費用への懸念もくすぶる。ゼロックスは富士ゼロックス株の売却で約23億ドルを得るが、株売却で得た資金のうち5億5000万ドルは、巨額の有利子負債の圧縮に充てると発表済みだ。「買収資金を金融機関からの借り入れでまかなうにしても、買収額が大きすぎる」(証券アナリスト)

それでもゼロックスがHP買収を提案したのは、事務機器市場で単独の生き残りが厳しいためだ。ゼロックスは18年に富士フイルムHDによる買収で合意したが、株主の著名投資家カール・アイカーン氏らがゼロックスへの評価が低いとして反対。経営陣が退任し、アイカーン氏が推薦したジョン・ビセンティン最高経営責任者(CEO)らが富士フイルムHDとの合意を破棄した。

ゼロックスはオフィス用の複合機が主力で、HPはレーザープリンターにも強い。ゼロックスのビセンティンCEOはHPとプリンターやトナーの相互供給で提携を決めるなど、HPとの距離を縮めた。事務機器業界では「相乗効果が見込める」との声がある。

ゼロックスは1906年創業で普通紙コピーで一時代を築き、傘下のパロアルト研究所はパソコンの原型を生み出した。米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏も同研究所の見学をきっかけに「マッキントッシュ」を作ったとされる。HPも元はシリコンバレーの源流企業と言われた。

隆盛を誇った老舗が再編の渦中に身を置かざるを得ないのは、GAFAなどの存在感が一段と強まっていることの裏返しとも言える。

再編の効果がコスト削減では、じり貧の構造は変わらない。ゼロックスとHPがイノベーションを生む企業に生まれ変わる「見取り図」を示せるかどうかがポイントになりそうだ。

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