齋藤芽生の個展 幻想的に描く団地やドライブイン

文化往来
2019/11/14 2:00
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「晒野団地四畳半詣『愛され過ぎた狛犬の祠』」(2006年)Photo(C)Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

「晒野団地四畳半詣『愛され過ぎた狛犬の祠』」(2006年)Photo(C)Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

高度経済成長期に林立し、すっかりうらぶれてしまった団地やドライブイン。虚無感漂う情景に着想し、幻想的な絵画を生み出すのが現代美術家の齋藤芽生だ。東京都の目黒区美術館で開かれている企画展「齋藤芽生とフローラの神殿」(12月1日まで)は初期からの作品約100点などを展示する。

「密愛村3『逃げた花嫁たちのためのバス停』」(2011年)Photo(C)Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

「密愛村3『逃げた花嫁たちのためのバス停』」(2011年)Photo(C)Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

無機質な団地の窓をモチーフにした連作「晒野(さらしの)団地四畳半詣」は2006年に発表した代表作だ。1950年代後半から日本各地に相次ぎ建てられた箱形の団地群。齋藤はオイルショック後、高度経済成長が終わりを迎えた70年代に都市郊外の団地で幼少期を過ごした。

当時の記憶と、成人して故郷を訪問したときの経験が作品の下敷きになっている。狭いけれど機能的な間取りの住宅で、働き盛りの夫婦が子供と暮らすにぎやかな団地は、今や高齢化が進み、ひっそり静まりかえっていた。

齋藤は「変化に衝撃を受け、画一的に見える窓の奥に確かにあった個々の生活に思いをはせた」と語る。連作では四角い窓の奥に、使い古しの乳母車やソファ、下着など、個人の思い出が詰まった物を置いた。ほぼ左右対称で、図案のように精緻な構図が印象的だ。

各地を旅する中で心引かれたドライブインやモーテルの情景からは、婚礼にまつわる不穏さを感じさせる「密愛村」シリーズが誕生した。コンテナに詰められて運ばれる花嫁衣装や、逃げ出した花嫁たちが立ち尽くしているかのようなバス停が描かれる。

「たとえるなら整然とした縫い目ではなく、『縺(もつ)れた糸』の細部にひかれている」と語る齋藤。その作品は、昭和から令和へ、移り変わる日本社会でどうしても生まれた縺れを克明に捉えているようでもある。

(岩本文枝)

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