19年のユーロ圏成長率、1.1%に下方修正 欧州委

ヨーロッパ
2019/11/7 19:15
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州経済が減速感を強めている。欧州連合(EU)の欧州委員会は7日公表した経済見通しで、ユーロ圏の2019年の実質成長率が1.1%になると予測した。7月時点から0.1ポイント引き下げた。1.1%はマイナス成長だった13年以来、6年ぶりの低水準となる。米中貿易戦争など外需の落ち込みに端を発した減速が内需にまで波及しつつある。景気下支えのためにドイツなどには財政出動を求める声が強まっている。

ドイツでは輸出低迷が製造業への打撃となっている(独フォルクスワーゲンの工場)=ロイター

20年のユーロ圏の成長率見通しは1.2%と、前回から0.2ポイント引き下げた。6日にユーロ圏の見通しを発表した国際通貨基金(IMF)も19年と20年を、いずれも下方修正した。欧州委は声明で「外部環境は厳しく、不確実性はなお高い」とし、ユーロ圏が厳しい状況にあるとの認識を示した。

国別でみると、けん引役のドイツ経済の悪化が際立つ。19年は0.4%の成長にとどまり、20年は1.0%と、0.4ポイント下方修正して先行きの厳しさを示唆した。ユーロ圏で2、3位のフランス、イタリアについては、19年は据え置いたものの、20年はそれぞれ引き下げた。

ユーロ圏が減速した大きな要因は、米中の貿易戦争など世界貿易の低迷だ。ユーロ圏の3割の国内総生産(GDP)を生み出すドイツは輸出主導の経済で大きく打撃を受けた。IMFによると、欧州各国のEU域外への輸出の伸びは、このところ前年比でゼロ%近くで推移する。17年後半から18年前半は4%程度だったのに比べ急減速している状況だ。中国などで景気の先行き不透明感から機械の購入などを控える動きが響いている。

外需の不振が内需にも及びつつあるのが、ユーロ圏の足元の動きだ。市場関係者の多くはユーロ圏の7~9月期の鉱工業生産は前期比減少したとみており、2四半期連続でマイナスとなったようだ。機械や自動車関連での落ち込みが目立つ。

生産の落ち込みを受けて、企業には先行きへの不安から投資を控える動きが出始めている。欧州の先進国に限ると、これまでGDPにプラス寄与していた投資が4~6月期にマイナスに転じた。欧州委は、ユーロ圏の投資は19年は前年比4.3%と底堅さを維持するものの、20年は2.0%、21年は1.9%に落ち込むと予想する。

ユーロ圏経済を踏みとどまらせているのは、好調な雇用に支えられた消費だ。9月の失業率は7.5%と08年以来の低水準。企業が人手を確保しようと待遇を改善するなどして賃金が上昇し、消費につながっている。だがIMFは雇用にも変調の兆しが出ていると警告する。採用の伸びが鈍化していることを挙げ、「企業は新規採用により慎重になっている」という。

実際、内需の状況を示すサービス業にも変調の兆しが出てきた。外需の不振の影響をじかに受けているのは製造業でIHSマークイットによると、ユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)は2月以降、節目となる50を下回り続けている。サービス業は18年1月を直近のピークとして緩やかに減速し、足元では50をやや上回る水準だ。

景気減速に危機感を強める政策当局者から、財政に比較的余裕があるドイツやオランダに景気下支えのための財政出動を求める声は強まっている。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は金融政策の打つ手が限られつつあるなか、「ドイツは必要ならば、動く準備ができている」と景気刺激策に期待を示した。

IMFは「景気減速に対応するには一致した財政措置をとるのが適切だ」と各国に財政出動を促した。EUのモスコビシ欧州委員(経済・財務・税制担当)は7日の声明で「すべての政策手段が使われるべきだ」と訴えた。だが、財政規律を重視するドイツ政府は歳出増には慎重だ。

金融市場では、ドイツは7~9月期まで2四半期連続でマイナス成長に陥ったとの見方が多い。なおはびこる保護主義的な動きに加え、英国のEU離脱や中東などでの地政学的な緊張といった不透明要因も多い。欧州委やEU加盟国、ECBが協調して、景気減速に歯止めをかける政策を打ち出せるかどうかがカギとなる。

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