人材獲得、スタートアップも負けない
IT人材争奪戦(4)

ルポ迫真
スタートアップ
ネット・IT
2019/11/8 2:00
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2009年国際物理オリンピック金メダル受賞、18年度東京大学大学院理学系研究科研究奨励賞受賞――。ため息の出るような実績を持つ東京大学大学院卒の東川翔(27)が就職先に選んだのは、検索システムのスタートアップ、フォルシア(東京・新宿)だった。

「成長が実感できるスタートアップへの就職が最大の自己投資」と話す東川翔さん(東京都新宿区)

「成長が実感できるスタートアップへの就職が最大の自己投資」と話す東川翔さん(東京都新宿区)

研究室の友人の多くは大学に残ったほか、国立研究開発法人、大手IT(情報技術)企業などで研究者への道を選んだ。だが東川は「国の景気が回復しないなか、大企業やアカデミアを選ぶことがリスク」と判断。自らの研究を捨て、裁量と成長が見込めるスタートアップに飛び込んだ。

【前回記事】 AI、技術も人も…会社ごと買う

今は会社で検索エンジンについて学ぶ。初任給は通常の学生より少し高い程度だ。「不安はあるが、能力が追いつけば解消する。力を付け、長期的なリターンを狙っている」

「人、環境、やりがいが自分や企業の成長に直結する。だからこの会社を選んだ」。今春、東大工学部を卒業した白木光達(22)はスタートアップのイエラエセキュリティ(東京・千代田)に入社した。

白木はサイバー攻撃を防ぐ「ホワイトハッカー」のトップ人材が集まるセキュリティ・キャンプの修了生だ。イエラエはフルフレックス勤務で1日数時間で仕事を終えてもいい。成果を出せば1年で100万円以上の昇給や、20歳代で年収1千万円になることもある。「引く手あまたの人材にはこれくらい当たり前」と代表取締役の牧田誠(37)は話す。技術者には使うパソコンも本人に選ばせる。

ただ、破格の優遇を示してもスタートアップに飛び込む人はまだ少数派だ。理系人材の採用支援を手がけるPOL(東京・千代田)によると、情報系専攻の大学院生324人のうち、従業員数が29人以下のスタートアップを希望すると答えた学生の比率は約10%にすぎない。

外国人はなおさらだ。日本のIT企業のスタートアップは知名度が低い。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)は、米スタンフォード大など13カ国37人の大学生・大学院生を招き、開発イベントのハッカソンを9月に開いた。日本までの渡航費用はすべて同社が負担。社長の南壮一郎(43)は「世界の優秀な人材を招くには当然の投資」と話す。企業のあり方を、超売り手市場が急変させている。

中藤玲、原欣宏、矢野摂士、福冨隼太郎、押切智義が担当しました。
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