今日も走ろう(鏑木毅)

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無駄な動きこそ発想の種 難局打開のカギに
今日も走ろう 鏑木毅

2019/11/7 3:00
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50歳で世界最高峰のトレイルランニングレース「UTMB」を目指す3年間におよぶプロジェクトが終わり、最近少しだけ心に余裕ができた。今までは一心不乱に駆け抜けて、ちょっとした考え事すらできなかった。暇になったというほどではないが、トレーニング量を減らし時間的な余裕もあるこの時期に心がけているのは、いつもの行動パターンを積極的に変えていくことだ。

例えば駅へ向かう道を少し変えてみたり、仕事の待ち合わせ場所に早めに着き、周辺をぶらぶら歩いたり、かねて聴講したかった公開講座に出席したり。最短時間で済むようなこともあえて寄り道し、これまでできなかったあれやこれやを思いに任せて実行している。

すると3年間でプロジェクト一つしか考えてこなかった頭にはいい刺激が入るのか、講演や原稿のアイデアが次々と浮かぶ。さらに50歳でのUTMB参戦に取って代わる次なる挑戦への前向きな気持ちまでもがふつふつとわいてくる。

マラソン大会に備えて娘と練習してみた

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これまでもずっと多角的に物事を考えるよう心がけてはいた。トレーニングでは一つのパターンに固執せず、さまざまな切り口で体を鍛える。速く走るには長い距離を踏む練習が不可欠だが、体幹トレーニングや自転車といった補助的なものや、縄跳びやトランポリンなど一見、関係なさそうなトレーニングを織り交ぜていかないとステップアップしない。その時は不必要だと思ったメニューでも実はさまざまな効果が合わさるうちに先々の苦しい局面で予期せぬ形で生きてくるといったことが起こる。

公務員時代、地域振興の仕事に携わっていた時のこと。職場は緊急の業務に追われ、上を下への大騒ぎの状態だった。話好きなある先輩は朝刊の白鳥の記事を私に見せ、「コブハクチョウとオオハクチョウって、こんな違いがあるんだね」と説明し、自分自身で納得していた。

私は目の前の仕事に手いっぱいで、なぜこの忙しいときにそんな話をするのかと思いながら、さして聞きもせず当たり障りのない返事をした。だがこの数日後、この先輩は振興策として渡り鳥をテーマとしたプロジェクトを提案し周囲を驚かせた。多趣味でアンテナを常に広く張り巡らせ、仕事の幅を広げる独特のセンスの持ち主だった。なるほど仕事とはこうあるべきなんだ、と感心させられた。

人間の頭は、ある程度先が読める行動パターンの繰り返しの中では思考が拘泥し、新たな発想やインスピレーションがわきにくくなるという。確かに多忙だとわずかな時間さえ捻出するのは大変だ。果たしてこの時間に何の意味があるのだろうと疑問を抱く時もある。でもメリットは実は大きい。

きっと違った行動や思考のパターンは頭のうちにある想像力か創造力を刺激し、新しいパワーを生み出すのだろう。よりアクティブに生きるためにはむしろこの無駄と思える時間や行動にこそ、難局を打開するカギが隠されているのではとにらんでいる。

(プロトレイルランナー)

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