世界株高、色濃い選別 IT・消費にマネー集中

2019/11/5 23:39
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米国株が史上最高値を更新し、米中の休戦をきっかけにした世界株高の様相が強まっている。世界の市場を見渡すと、デジタル化で成長するIT(情報技術)や、堅調な消費市場の勝ち組の株高が目立つ。一方、貿易摩擦の再燃懸念から、自動車や石油などは株価の戻りが鈍い。国別でも開きが大きく、投資家は全面的な強気にはなれず、選別を進めている。

4日の米株市場ではアップルが最高値を更新した。ダウ工業株30種平均が史上最高値を更新した裏側には、「GAFA」が代表するIT株の「復活」がある。グーグルを傘下に持つアルファベットやマイクロソフトも高値圏にある。

IT株は、18年半ばまで市場をけん引していたが、米フェイスブックの個人情報流用問題をきっかけにハイテク大手への規制論が広がると人気が陰っていた。

今年は、クラウド事業や人工知能(AI)スピーカーなどで稼ぐ力が再評価された。QUICK・ファクトセットの集計ではGAFA4社の19年の純利益は合計1171億ドル(約13兆円)と5年前の約2倍の見通しだ。

世界経済の成長力が落ち、外部環境に左右されずに稼げるITに投資マネーが集中する構図だ。もう一つの柱は、貿易が減り、製造業が不振に陥る中でも堅調さを保つ消費市場で伸びる企業だ。

時価総額が1000億ドルを上回る世界の主要企業を対象に、世界株が高値を付けた18年1月26日以降の株価上昇率をランキングすると、IT、消費関連が上位に並ぶ。

米マスターカードの株価は同期間に62%上昇した。キャッシュレス化が世界で広がり、「カード決済の利用拡大が続いている」(野村証券の村山誠氏)。ルイ・ヴィトンなどを傘下に持つ仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンや、中国酒造大手の貴州茅台酒は中国の需要を取り込んでいる。

日本株ではIT投資の恩恵を受ける半導体製造装置や電子部品株に資金が流入し、同期間にアドバンテスト(2.4倍)や太陽誘電(60%高)が上昇した。消費関連では資生堂(54%高)やファーストリテイリング(38%高)の上昇が目立つ。

一方、下落率上位には中国石油天然気(39%安)や中国農業銀行(32%安)、騰訊控股(テンセント、30%安)など中国株が並ぶ。米中摩擦が重荷だ。全般に自動車や鉄鋼など製造業の株価水準はなお低い。

各国別では、ITの多い米国株の強さが際立つ。世界取引所連盟(WFE)などの集計をもとに計算すると、米国株全体の時価総額は35.9兆ドルで世界の42.4%を占める。シェアは15年ぶりの大きさになった。

一方、日本株は18年10月に付けた高値(2万4270円)に4%ほど届かない。中国株や香港株も18年以降に付けた高値を1割以上下回る。対中輸出の多い韓国では高値からの株価下落率が2割近い。米中摩擦や地政学リスクによる投資家の選別姿勢が強まっている。

■緩和頼みに不安も

世界の株式相場が再び上昇基調となり、市場では金融緩和と緩やかな景気回復が並行する「適温相場」に入ったとの声も出てきた。米連邦準備理事会(FRB)は米国株が高値でも利下げし、世界経済の重荷となってきた米中対立もひとまず休戦モードだ。もっとも、2018年初めまで続いた適温相場は株価の急落で終わった。足元でも緩和依存が強く、米中摩擦の再燃などのショックで相場は急変しかねない。

「FRBお墨付きのゴルディロックス(適温)相場」(大和証券の谷栄一郎氏)「金融政策主導のラリー」(元米財務次官のネイサン・シーツ氏)。株式にとって良い環境になってきたとの指摘が増えている。

パウエルFRB議長は10月30日、利上げ再開には「インフレ率の顕著な上昇が必要」と指摘した。目先でインフレ懸念は乏しい。市場は低金利が長く続くとの見方に傾きリスク志向を強めた。

日本でも、日銀の株価下支えが続いている。5日に名古屋市で記者会見した黒田東彦総裁は、株価上昇局面で上場投資信託(ETF)を買い続ける妥当性を問われ、「リスクプレミアムをみながら弾力的に(買い入れ額を)増減しており、大きな問題が生じているとは思っていない」と、現時点で政策変更の必要はないとの認識を示した。

米国株には割高感もみられる。株価が利益の何倍まで買われているかを示すPER(株価収益率)をみると、米主要500社では17.4倍(ファクトセット調べ)と、16年11月に始まった「トランプ相場」の平均(16.9倍)を上回る。

ある米保険会社の運用担当者は「米株の割高さは意識しているが、今のタイミングで売っても他に買うものがない」と指摘する。低金利の長期化は過度なリスク選好につながりかねない。18年には、安定した株高が続くと利益を得られる取引が積み上がり、市場波乱の要因になった。(ニューヨーク=後藤達也、宮本岳則、和田大蔵)

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