富士フイルム、米ゼロックスと合弁解消 提携は維持

2019/11/5 23:00
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富士フイルムホールディングス(HD)は5日、事務機器大手の米ゼロックスとの合弁事業を解消すると発表した。今月上旬にゼロックスが持つ25%の富士ゼロックス株などを23億ドル(約2500億円)で買い取る。交渉が難航していたゼロックス本体の買収も断念する。ペーパーレス化で市場の縮小が続くなか、両社の関係が決裂する事態は避け、事業面の提携関係は当面維持する。

記者会見で厳しい表情を見せる富士フイルムホールディングスの古森会長(5日、東京・大手町)

記者会見で厳しい表情を見せる富士フイルムホールディングスの古森会長(5日、東京・大手町)

富士ゼロックスは1962年に富士写真フイルム(現・富士フイルムHD)とゼロックスが折半出資で設立。2001年に富士写真フイルムがゼロックスの持ち分の一部を買い取り、75%出資の連結子会社にした。

富士ゼロックスは日本と海外企業の合弁事業の成功例とされてきた。世界初の複写機を開発したゼロックスの技術やブランドをベースに富士フイルムの開発・生産技術を融合。販売地域は富士ゼロックスが日本を含むアジア太平洋、ゼロックスが欧米と分担してきた。18年の複合機の世界シェアは両社合計で約17%と世界4強の一角を占める。

富士フイルムは18年1月、ゼロックスの買収を発表し一体運営による収益向上を狙った。だがゼロックスの物言う株主であるカール・アイカーン氏らが「ゼロックスの価値を過小評価している」と反発。ゼロックスは同氏らが推薦する経営陣を受け入れ、一度合意した契約を破棄した。富士フイルムは契約破棄に対し、損害賠償請求の訴訟を起こしていた。

両社が5日に結んだ契約では、富士フイルムがゼロックスの持つ25%分の富士ゼロックス株を22億ドルで取得する。欧米でレーザープリンターなどをOEM(相手先ブランドによる生産)供給する合弁事業の持ち分などを1億ドルで取得する。ゼロックスへの訴訟は取り下げる。

契約見直しに伴い、富士ゼロックスはゼロックスに製品供給を5年続ける一方、ゼロックス以外にも供給できるようになる。富士フイルムと人材や技術の交流を進め、医療など成長分野に注力する。富士ゼロックスの販路も広げ、同社の売上高を24年度に18年度比3割増の1兆3000億円に引き上げる方針だ。

富士フイルムの古森重隆会長は同日に都内で開いた記者会見で、ゼロックスとの関係について「経営統合は考えない。独自の道で行く」と買収を断念する考えを表明。「富士ゼロックスのOEM販売地域を全世界に広げる」と述べた。

富士フイルムが富士ゼロックスを完全子会社化することで、最終的なもうけを示す連結純利益は年間で200億円程度増える見込み。販売増や拠点の統合などを通じ24年度には営業利益を500億円以上増やす考えだ。

一方、ゼロックスは事務機市場が頭打ちとなるなか、約2500億円の現金を得て株主還元や成長投資に回せる。将来は富士ゼロックス以外からも製品を調達しやすくなる。ジョン・ビセンティン最高経営責任者(CEO)は同日発表したコメントで「今回の合意は富士フイルムとの関係をリセットし、両社に大きな成長の機会をもたらす」と述べた。

富士フイルムが起こした訴訟は判決まで年単位の時間がかかるとみられたなか、潮目が変わったのが今年の夏ごろだ。事務機を取り巻く市場環境は厳しさを増している。欧米を中心に市場が縮む中、両社は水面下で接触を重ね落としどころを探っていた。

富士フイルムの助野健児社長は記者会見で「前回の買収案は(ゼロックス側の)株主総会の決議が必要なのに対し、今回は取締役会決議で決められる。取引完了までの期間も短く(合意が覆された)前回のようなことはない」と語った。

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