大学入学共通テスト「国数の記述式も見送りを」
英語民間試験の活用が見送られた2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、高校現場や政界などから国語と数学の記述式問題についても導入見送りを求める声が出ている。採点の公平性への疑問や、受験生の自己採点の難しさが理由だ。文部科学省は不安解消策を講じた上で予定通り導入する姿勢だが、関係者の懸念は強い。

「記述式の自己採点は無理、危険だ。何点か分からないまま出願しないといけない」。5日、参院議員会館で開かれた野党の会合で静岡県立掛川西高の駒形一路教諭(国語)は語気を強めた。
記述式問題は従来のマーク式問題と異なり、採点が複雑で自己採点も難しい。50万人規模が受験する共通テストでは1万人程度の採点者が必要とみられる。駒形教諭は「1万人の採点者がいれば、採点基準は少しずつ変わっていく」と、採点がぶれて不公平になる恐れも指摘した。
自己採点が難しいのは解答例を読んで部分点がとれたかを判断する際などに読解力を求められるからだ。18年の共通テストの試行調査では、自己採点と実際の採点結果の一致率が国語で66.0~70.7%にとどまった。
現行の大学入試センター試験は全問題がマーク式。一致率は100%が期待でき、国立大入試などは自己採点の結果を基にした出願が定着している。代々木ゼミナールの佐藤雄太郎・教育事業推進本部本部長は「受験生は解答例と自分の表現が同じかどうかといった点で悩むだろう。得点が分からず、出願先選びが安全志向になる可能性がある」と危ぶむ。

5日の衆院文部科学委員会。全国高等学校長協会の萩原聡会長(都立西高校長)は「意見集約はしていないが今後の不安はあると認識している」と発言。日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘学園理事長)は「採点は各大学がしたらどうか。完璧な解答があるということに疑問がある」と述べた。
公明党の山口那津男代表は5日の記者会見で「公平性や評価の妥当性を確保するために最大限の配慮をすべきだ。与党の議論を十分にした上で、その意見を政府も受け止めるべきだ」と述べた。立憲民主党の福山哲郎幹事長も会見で「記述式という大きな課題が残っている」と強調した。
大学では東北大が不公平の恐れを理由に国語では記述式の成績を原則合否判定に活用せず、合否ラインに同点で並んだ場合のみ使うとしている。
一方、菅義偉官房長官は5日の会見で「今回の英語の試験とは違うのではないか」と述べ、見直しに慎重姿勢を示した。英語民間試験と異なり、大学入試センターが一律に実施する試験の一部であることなどを念頭に置いた可能性がある。
活用を予定している東京都内の有名私立大の入試担当者は同日、「自己採点が不正確になりかねないだけで活用を見送るのには疑問があるが、懸念の払拭へ万全の準備をしてほしい」と求めた。
文科省は対策を講じる考え。採点を確実に行い、自己採点をしやすくするための措置を検討する。入試センターは課題を洗い出すため11月中に高校生約1万人に記述式問題を解いてもらい、「模擬採点」を実施する。採点業務を受注したベネッセグループの企業とともに検証し、年明けに結果を公表する方針だ。