西武鉄道 観光・レジャーでリベンジ狙う
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コラム(地域)
2019/11/6 2:00
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温泉や物販、フードコートの複合施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」を2017年に開業した

温泉や物販、フードコートの複合施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」を2017年に開業した

西武鉄道が成長のエンジンのもう1つの柱として注力するのが「観光レジャー」。顧客ニーズを見極めきれず失敗した「秩父ミューズパーク」「ユネスコ村」の反省を生かし、マーケティング重視で再び秩父・西武球場周辺に人を呼び込む。矢継ぎ早の投資は効果を生みつつあり、8月の定期外収入は前年同月比3.2%増で関東私鉄8社でトップの増加率だった。

「終着駅・秩父を広域から集客できる観光地に」――。西武鉄道は2016年、池袋駅―西武秩父駅間などで関東私鉄初の観光列車「西武 旅するレストラン 52席の至福」を導入した。建築家の隈研吾氏がデザインした車両で、地域の食材のコース料理や酒を提供。列車に乗ること自体が「旅」となるよう仕向けた。

さらに駅自体を目的地とすることを狙い「西武秩父駅前温泉 祭の湯」を開業。ハード面だけでなく、地元と連携して「芝桜」や「氷柱」などの観光資源もPRした。

かつて西武は同地でテニスコートやアイススケート場などの複合施設「秩父ミューズパーク」(秩父市)を運営していた。しかし変化する需要に対応しきれず収支は赤字続き。06年には秩父市に無償で譲渡し、開発から撤退した。

同じ轍(てつ)を踏むまいとする西武が今、重視するのは徹底的なマーケティング。「箱物」だけでなく旅の過程・体験を重視し、若年層から高齢者まで幅広い世代にそれぞれ照準を当て集客を図る。2018年度秩父地域を訪れた観光客は965万人。5年前に比べ14%増えた。足元の定期外乗降客数(4~6月期、1日平均)も前年同期比で10.8%増加している。

次なる手はメットライフドームを中心とした西武球場エリアの再開発だ。西武HD社内では経営陣が「社の将来を決める」と、檄を飛ばす。

関東の私鉄で唯一持つ球場、遊園地、屋内スキー場など資源が集中するが、現状は長期低迷から脱せていない。西武園ゆうえんちの入場者数は194万人を誇った1988年度のピーク時から、ほぼ一貫して減少。18年度には49万人まで落ち込んだ。

今秋、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの再建に携わった森岡毅氏が最高経営責任者(CEO)を務めるマーケティング支援会社「刀」の力を得て、21年に大規模リニューアルを実施することを発表した。「刀と組むことで人材育成を含め、西武に足りなかった企画構想力・運営ノウハウを貪欲に吸収したい」(西武HD)。

遊園地と共に球場も180億円を投じ改修に取り組む。野球ファンだけでなく誰もが楽しめる「ボールパーク」にしようと、遊具を設置した広場やイベントスペースを整備、21年3月に完成させる予定だ。

運営面でもコンサート誘致を強化してテコ入れを図っており、19年4~6月期の開催日は前年同期の4日を大きく上回る12日。西武球場前駅の定期外・乗降客数(1日平均)の伸び率は21.9%増で沿線トップを記録した。

「オワコン」(終わったコンテンツ。時代遅れといった意味)になりかけた施設に再投資し、輝きを取り戻す。そのためには「時代のニーズとマーケットを慎重に把握した上で、自らの資源の価値を的確に捉えて連携施策を打ち出していく必要がある」(内野誠第三事業戦略部長)。観光レジャーでのリベンジに、西武の未来がかかっている。

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