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「ワンチーム」築いた個性 桜戦士の激闘振り返る

ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会は2日、南アフリカの3度目の優勝で44日間の熱戦に幕を下ろした。次回2023年大会はフランスで開催される。9回目にして初めてアジアで開かれた大会で日本は初の8強入り、新たな歴史の扉を開いた。

相手が強豪国でも姫野は当たり負けしなかった

日本代表は「ワンチーム」を旗印に掲げて戦った。最大の武器は組織力やまとまりだったが、ひ弱な人間の集まりでは8強の壁は破れない。今大会は「個」でも海外勢と十分に渡り合い、まぶしい光も見せた。

過去の日本の姿を考えると、最大の衝撃はフランカー姫野和樹のパワーだろう。相手が強豪のアイルランドでも当たり負けはしなかった。スピードをつけて勢いではじき飛ばすというより、どしっと当たって力で前進する。体幹や上半身の力が強いからこそなせる技。ほとんどの試合で、ボールを持った時は80%前後の高確率で前進できた。

かつての日本はスピードや技術で上回っても体格で粉砕された。W杯で普通に当たり勝つ姫野は今の日本の象徴。パワーは密集戦でも生きた。計5度のジャッカル(ボール奪取)に成功。ゴール前の危機も救った。「自分の強みはかなり出せた。日本人でもやれると思ってもらえたらうれしい」。姫野は胸を張る。

松島は華麗なステップワーク、スピードを披露した

WTB松島幸太朗のステップワーク、スピードは、分かりやすい日本の魅力だった。5トライも見事だが、防御ラインの微妙な凸凹を見つけて走り、鋭角の方向転換で切り裂く様は痛快だった。

もう一方のWTB、福岡堅樹は世界レベルのスピードを見せた。負傷で出遅れたが、初先発したスコットランド戦ではエンジン全開となった。CTBラファエレ・ティモシーのゴロのキックに反応して奪ったトライは速さに加え、ボールの弾み方まで想定した頭脳的なコース取りが実った。

両翼はボールを持っていない時も目立った。松島は自身のベストプレーに「南ア戦でのハイボール(キャッチ)」を挙げる。相手が高いボールを蹴り続けたが、松島はほとんどを確保。前半の日本の健闘の一因となった。福岡は密集戦でも活躍した。ジャッカルを成功させ、相手の球出しを遅らせる。「ただ走ってトライを取るだけの選手にはなりたくなかった」という言葉通りだった。

派手なこの3人とは別に、チームの土台をしっかり支えた選手もいる。フッカー堀江翔太はMVP級の活躍。スクラムとラインアウトのかじ取りを担った。プロップ稲垣啓太もスクラムと守備時の「声」で貢献した。ロック陣の奮闘も目立った。トンプソン・ルーク、ジェームス・ムーアは驚異的なタックルの量と質を記録。身長では対戦相手を下回りながらも、ラインアウトでも高確率でボールを確保した。

バックスでは流大と田村優のハーフ団やラファエレが忠実に戦術を遂行。CTB中村亮土は強みの守備に加え、ロシア戦では華麗なオフロードパスでトライをアシスト。積み重ねた鍛錬を象徴するシーンだった。

10人のリーダー陣は戦術の詰めや一体感の醸成などピッチ外でも奮闘した。リーチ・マイケル主将の存在もチームに芯を通した。「常に人に気を使って誰からも愛される。リーチさんがいなければここまで来れなかった」と流。ジョセフ・ヘッドコーチが不調とみたリーチを一時、ゲーム主将から外す決断をしたのも信頼感の裏返しだった。

出場機会がなかった5選手ら陰で貢献したヒーローもいる。自国開催の重圧の中、それぞれが個性を生かし、ワンチームとなってつかんだ8強入りだ。

準々決勝ではベストメンバーの南アに完敗。過去の日本が未体験だった世界に足を踏み入れた。王者との差を体感したことで「個人としてもジャパンとしてももっと強くなれる」と松島。個として、集団として確実に成長した日本。今の歩みを続ければ、追いつく日はいつか来ると期待させる。

(谷口誠)

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