RCEP年内妥結断念 インドが抵抗、離脱も示唆

2019/11/4 22:02 (2019/11/5 0:28更新)
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関税撤廃などで慎重な姿勢を崩さないインドのモディ首相(中)(4日、バンコク)=ロイター

関税撤廃などで慎重な姿勢を崩さないインドのモディ首相(中)(4日、バンコク)=ロイター

【バンコク=辻隆史、馬場燃】日本や中国、韓国など16カ国は4日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を巡り、目標としていた年内妥結を断念した。大部分の交渉にめどをつけたが、貿易赤字の拡大を懸念するインドが関税撤廃などで慎重姿勢を崩さなかった。インドは会合後に「RCEPに今後参加しないと各国に伝えた」と交渉からの離脱も示唆しており、枠組みそのものが揺らぐ恐れも出てきた。

RCEPは13年から日中韓のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどが交渉を進めてきた。合意すれば世界の人口の約半分、貿易額の約3割を占める巨大な自由貿易圏ができる。

ただ、最終局面でインドが譲歩せず、交渉参加各国が4日の首脳会合で目指した16カ国全体の妥結はできなかった。17年と18年に続き、19年も年内の妥結をめざしながら実現できなかった。

首脳会合では20年の署名をめざし、協議を続けることを決めた。

もっとも、インド外務省のビジェイ・シン局長は会合後の記者会見で、RCEPについて「インドにとって解決されていない重要な懸念がある」と語り、この先の協議に参加しない可能性に言及した。ただ交渉でインドとの調整役を務めるインドネシアの政府関係者は離脱について「連絡を受けていない」と述べた。

新興の経済大国として台頭してきたインドが、交渉の最終局面で自由化への慎重姿勢を強めた理由は大きく3つある。

1つは足元の経済成長の鈍化だ。インドは19年4~6月期の実質成長率が5%に下がり、失業率も過去最悪の水準となった。14年に就任したモディ首相は7~8%の高成長を保ってきたが、政権初の景気減速局面を迎えて「自由貿易が拡大すれば農業など自国産業が大きな打撃を受けかねない」(交渉筋)と警戒を強めたもようだ。

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2つめは市場開放に対する国内の反発でモディ氏の政治基盤が揺らぎかねないことだ。同氏の与党は5月の総選挙の勝利で2期目の土台を固めたようにみえたが、景気減速により10月末の州議会選挙では大きく議席を減らした。看板政策とする国内製造業の振興策「メーク・イン・インディア」もふるわず、貧困問題や雇用に目配りせざるを得ない。

日本などRCEPの交渉各国は、モディ氏が総選挙を乗り切れば早期妥結に前向きな姿勢に転じるとみていたが、現時点では期待外れだ。

3つめは貿易赤字が拡大することへの懸念だ。インドは約13億人の人口大国だが、1人あたりの国内総生産(GDP)は2千ドル(約21万7千円)強にすぎず、16カ国のうち14位と低迷する。産業競争力は低いままだ。

17年のインドの貿易総額は7494億ドルに上り、このうちRCEP交渉国が約3割を占める。交渉国はインドの貿易赤字の65%を占め、特に中国の赤字が全体の4割近くと大きい。交渉結果次第では中国の電気製品やオーストラリアなどの農産物が一段と流入し、赤字が膨らみかねない。

モディ氏は首脳会合を控え、2日にRCEPについて「インドの利益と懸念事項がどう反映されているかを検討したい」と述べ、自国への影響を厳しく見極める考えを強調していた。3日にはインドネシアのジョコ大統領、4日には日本の安倍晋三首相がそれぞれモディ氏と会談し、説得を試みる場面もあった。

米国が保護主義を強めるなか、南アジアの大国インドを含む経済連携が実現すれば、貿易自由化の新たなけん引役になるとの期待も大きい。

交渉参加国の間ではインド抜きの合意を検討せざるをえないとの声もあるが、日本は明確に反対している。インド抜きでは中国の影響力が突出する恐れがあると警戒しているためだ。20年の妥結に向けては日本の交渉力も試される。安倍首相は首脳会合で「20年の議長国ベトナムと協力し、署名に向け主導的役割を果たす」と強調した。

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