マレーシア首相、ゴールドマンの和解案拒否 FT報道
【ニューヨーク=宮本岳則】マレーシアのマハティール首相は1日までに英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューに応じ、政府系ファンド「1MDB」を舞台とした不正問題を巡り、米金融大手ゴールドマン・サックスから「20億ドル(約2160億円)未満」の和解金支払い案を提示されたことを明らかにした。要求額に届かず、提案を拒否したという。対立解消に向けた両者の駆け引きが続いているようだ。

1MDBを巡っては債券発行で調達した資金の一部が、本来の目的であるインフラ投資に使われず、賄賂などに流用された。ゴールドマンは同ファンドの債券引受業務をつとめ、約6億ドルの手数料収入を得た。
2018年11月に米司法省が、資金流用に関与したゴールドマン元幹部を起訴し、法人の責任についても調査が続く。同12月にはマレーシア検察当局がゴールドマン子会社を起訴し、法人としての責任を追及している。
マレーシア政府とゴールドマンは水面下で和解に向けた交渉を続けている。マハティール首相はFTの取材に対し、ゴールドマンの提示した補償金支払い額が20億ドル未満だったとした上で「我々はその額に満足しておらず、交渉を続けている」と述べた。「もし我々が満足のいく程度の対応をしてくれれば、75億ドルの支払いを要求しなかったかもしれない」とも付け加えた。
マレーシア政府は公式の場で、ゴールドマンに罰金75億ドルの支払いを求めてきた。マハティール首相はFTとのインタビューでもこの金額を再び持ち出し、ゴールドマンに圧力をかけた。
ただ、米ブルームバーグ通信は10月下旬、両者は非公式に協議を進め、20億~30億ドルの支払いで決着する可能性があると報じた。マレーシア政府は流出した資金の回収を公約に掲げており、ゴールドマンとの早期合意を望んでいるという。
ゴールドマン側も難しい対応を迫られている。マレーシア当局との交渉に加え、米当局とも課徴金支払いなどで協議を続けているとみられる。1MDB問題を巡っては、元幹部の関与を認めたものの、法人としての責任は認めない立場で、簡単には和解に応じられない。
一方、問題解決の遅れが、投資家の懸念につながり、株価の重荷となっている。ゴールドマンは6月末時点で、課徴金などにかかわる引当金を25億ドルまで積んだと明らかにしている。