英語民間試験の活用見送り 見切り発車で混乱拡大

2019/11/1 22:08
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英語民間試験の実施延期を発表する萩生田文科相(1日午前、文科省)

英語民間試験の実施延期を発表する萩生田文科相(1日午前、文科省)

2020年度に始まる大学入試改革の目玉だった英語の民間試験が、実施まで5カ月の土壇場で見送りとなった。準備してきた高校や大学、試験団体からは反発や戸惑いの声が上がり、混乱は収まりそうにない。制度設計の甘さに目をつぶって見切り発車で導入に突き進んだ文部科学省の責任は重い。

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「皆さまとの約束を果たせなくなってしまったことを、大変申し訳なく思います」「試験会場(探し)を団体任せにしていた」。1日の記者会見で、萩生田光一文科相は受験生に謝罪するとともに、民間試験団体に準備を事実上丸投げしていたことへの反省を述べた。

萩生田氏が受験機会の格差に関し「身の丈に合わせて頑張ってほしい」と発言して以降、試験延期を求める声は強まる一方だった。それでも文科省内では「延期したら余計に混乱する。準備してきた受験生もいる」と慎重な意見が多かった。

状況が急転したのは10月31日だ。文科省の設定した公表期限である11月1日を前に、実施団体が試験会場の場所などを開示。ベネッセコーポレーションが全国161地域に会場を置くと発表するなどしたが、全体像は明らかにならなかった。

受験機会の格差の解消が不透明になる中、省内でも20年度の実施を見送らざるを得ないとする雰囲気が強まっていった。

政権の思惑も影響した。菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相と閣僚が相次ぎ辞任し、導入を強行すれば安倍政権への批判が強まりかねないという懸念があった。文科省は31日も幹部が首相官邸と調整を続けたが、最終的に見送りとなった。

民間試験を巡っては、受験生の居住地や家庭の経済状況で受験機会に差が出るとの懸念が当初から指摘されていた。目的や内容が異なる複数の民間試験を同じ物差しで比べることにも疑問の声が上がっていた。

文科省は指摘のたびにつぎはぎの対応を重ねた。高校側で「各大学の成績の活用方法が未定で対策ができない」と不満が高まると、活用方法の公表期限を急きょ設定。期限までに公表した大学に限り、民間試験の成績提供システムの利用を認めるといった具合だった。

同省が実施にこだわったのは、民間試験が大学入試改革の残り少ない目玉だったからだ。政府の教育再生実行会議や中央教育審議会が提言した項目のうち、共通試験の年複数回実施や、高校生の基礎学力テストの導入構想は高校側の反対などで後退。「英語民間試験と共通テストでの記述式問題の導入くらいしか残っていない」(同省幹部)状態で、民間試験の見送りは自らのメンツがつぶれることを意味した。

見送りについて、自民党の世耕弘成参院幹事長は1日の記者会見で「文科省の制度設計の詰めの甘さが原因だ」と批判。公明党の斉藤鉄夫幹事長も「不安と混乱を招いた責任は政府と文科省にある。大いに反省してほしい」と話した。

見送りの影響は大きい。既に多くの高校生が民間試験の受験準備を進め、試験の実施団体も会場を借りて機器をそろえている。こうした投資を巡り政府が補償を求められるリスクがある。

国公私立大の6割は民間試験の成績提供システムを利用する予定だった。今後は選抜方法の見直しを迫られる。同省は検討会議を設けて制度を抜本的に見直し、1年後をめどに新たな英語試験の結論を出すというが、受験機会の公平性や成績評価の客観性の問題を短期間でクリアできるのか。議論は難航しそうだ。

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