量子計算機・空飛ぶ車… 2040年に実現する未来技術は
文科省研究所が予測

2019/11/1 17:00
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米グーグルが開発した量子コンピューター(同社提供)

米グーグルが開発した量子コンピューター(同社提供)

2035年に実用的な性能を持った次世代計算機「量子コンピューター」が実現し、33年には「空飛ぶ車」が都市部で人を運ぶ――。こんな未来の科学技術の予測を文部科学省の科学技術・学術政策研究所がまとめた。専門家約5300人への調査などを基に2040年の未来像を描き、約700の科学技術が普及する時期などを分析した。政府は分析結果を科学政策の議論に役立てる。

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同研究所は1日、「科学技術予測調査」の報告書を公表した。調査は1971年に始まり、今回が11回目。2050年までの約30年間を展望し、40年の未来像を描くことを目指した。専門家が将来的に重要だと選んだ702の研究テーマについては、大学や企業の研究者ら5352人に実現の見通しや重要度、日本の国際競争力などをアンケート調査した。

研究テーマはロボットや人工知能(AI)、医療、防災といった生活に身近なものから、宇宙や生命の根源的な謎に迫る基礎科学まで多岐にわたる。15年公表の前回調査では932のテーマが対象だったが、社会の変化や科学技術の進展に合わせて選び直した。

これまでの調査では実現時期の予測と実際に大きな差が出るテーマも見られ、的中率をめぐっては議論もある。ただ、09年に過去の予測を検証したところ、約7割のテーマが実現していたという。時期の正確な予測は専門家でも難しいが、実現するかどうかはおおむね見通すことができているといえそうだ。

量子コンピューターをはじめとする量子技術は、AIなどに続く革新技術として期待されている。米欧中が巨額投資で開発を進め、40年、50年に向けて競争は激しくなる。日本政府も19年内に量子技術の研究開発の戦略を初めて策定し、今後10年間の具体的な工程表もまとめる予定だ。

米グーグルは10月、量子コンピューターが従来型のコンピューターには困難な問題を解く「量子超越」を実証したと発表。53個の「量子ビット」を計算に利用した。

今回の予測調査は、グーグルを上回る数百の量子ビットの量子コンピューターが35年ごろに実現し、一部で使われ始めると見通した。材料開発などで使われる可能性がある。近年の量子コンピューターの性能向上は目覚ましく、実現の時期は早まる可能性がある。

ロボットやAIといった先進技術は、生活や働き方を大きく変える可能性を秘める。次世代のロボットとAIによって外科医の熟練に頼らない手術(実用化予測は32年)、都市部で人を運べる空飛ぶ車(同33年)、発話できない人や動物と会話できる装置(同34年)など、SFに出てくるような未来技術も登場する。

科学技術が細分化して複雑化する中、従来の分野の枠にとらわれない研究開発の重要性が増している。今回の調査では新しい試みとして、研究テーマをAIの言語処理と専門家の議論によって分類し、8つの異分野融合の研究領域を見いだした。同研究所の赤池伸一上席フェローは「イノベーションや国際競争力につながる重要な領域だと考えられる」と話す。

日本に競争力があり、実用化も強く期待される領域に「自然災害に関する先進的観測・予測技術」がある。堤防の決壊を事前に察知(30年)、国内の全ての活火山について次に噴火しそうな火山などの切迫度を評価(33年)、マグニチュード(M)7以上の内陸地震の発生場所や規模の予測(36年)などが含まれた。

ただ、テーマによっては専門家の間でも実現性をめぐる見解が分かれている。たとえば、M7以上の内陸地震の予測については「実現しない」との回答が28%、「(実用化時期が)わからない」も28%に上った。M8以上の大規模地震の発生予測も「実現しない」が27%、「わからない」が22%となった。

科学技術予測調査は個別の研究テーマの実現性や実用化時期を厳密に探ることが目的ではなく、将来の科学技術と社会の姿を議論するための材料を提供することに主眼がある。研究開発のブレークスルーだけでなく、倫理面での課題克服や規制緩和などの支援が必要になるテーマも多い。

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