小説「十二国記」18年ぶり新作、異例の売り上げ

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読書
2019/11/5 2:00
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三省堂書店有楽町店では書店員が作成したフリーペーパーを配布、「十二国記」ブームを後押しする(東京都千代田区)

三省堂書店有楽町店では書店員が作成したフリーペーパーを配布、「十二国記」ブームを後押しする(東京都千代田区)

計4巻を10~11月の2回にわたって刊行する小野不由美著「十二国記」シリーズ(新潮文庫)が前代未聞の発行部数を記録している。ファンタジーと伝奇の要素を織り交ぜた人気シリーズ18年ぶりの新作長編に、ファンは刊行前から大いに盛り上がり、発売当日の熱気は最高潮に達した。

第1巻初版は「新潮文庫史上最高」の50万部で、10月12日の発売から3日で約半分を売り上げ重版が即決定した。3、4巻(11月9日発売)も「事前重版」。1~4巻いずれも55万部以上、計241万部に上り、異例づくしの売り上げに新潮社の担当者も「想像以上だ」と驚く。

「十二国記」は架空の12の国を舞台とした異世界譚(たん)。新潮社の読書誌「波」11月号に掲載されたインタビューで、山本周五郎賞の受賞歴もある小野は「田中芳樹『銀河英雄伝説』、『ナルニア国』シリーズ、『西遊記』、『水滸伝』から大いに影響を受けた」と語る。1991年に独立した長編として始まり、翌年にシリーズ化。2012年から、発表済みの計9作が順次、新潮文庫に再録された。作り込まれた設定の中で各巻は相互につながる。新作と合わせて既刊の売れ行きも好調だ。

昨年12月に新作の予定が発表されるとSNSで話題が沸騰。ファンは進捗状況の報が入るたびに歓喜した。新潮社は全国の書店で大規模な販促を展開。約1500店が9月ごろからカウントダウンの日めくりカレンダーを置き、特設コーナーを設けた。書店員の間でもファンは多く、盛り上がりを後押しした。紀伊国屋書店新宿本店(東京・新宿)では9月末から催事場でイラストポスターを展示、関連グッズを販売した。台風の影響で1日遅れで初日となった13日は、50人超が店先に並び整理券を配布。三省堂書店有楽町店(東京・千代田)では複数の書店員が物語や読み方を紹介するフリーペーパーを作成した。

同シリーズはジャンルを超えた世界観で幅広い層の読者を魅了してきた。文芸評論家の北上次郎氏は「ファンタジーという衣装をまとった、生きるとは何か、信じるとは何かという人の本質に迫る骨太の物語。50年後も古びないだろう」と話している。

(村上由樹)

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