パレスチナ人監督、民族対立を笑うコメディー映画

文化往来
2019/11/8 2:00
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パレスチナ人とイスラエル人が入り乱れて騒動を起こすコメディー映画「テルアビブ・オン・ファイア」が22日から日本公開となる。権威的なイスラエル人司令官の味覚オンチをからかったり、ヘブライ語の単語を巡ってパレスチナ人青年が失態を演じたり。監督はイスラエルにあるパレスチナ人の村で生まれ、アラビア語もヘブライ語も解するパレスチナ人のサメフ・ゾアビ。際どいブラックユーモアをちりばめ、世界各地の映画祭で話題をさらった。

映画「テルアビブ・オン・ファイア」の場面(C)Samsa Film-TS Productions-Lama Films-Films From There-Artemis Productions C623

映画「テルアビブ・オン・ファイア」の場面(C)Samsa Film-TS Productions-Lama Films-Films From There-Artemis Productions C623

当初、欧州出身のプロデューサーは踏み込んだ笑いに対して観客の反応を心配していたという。だが、ゾアビ監督は「紋切り型のタブーを逆手に描こうと思った。私自身は脚本を書いてみて『これは大丈夫』と確信していた。機が熟していると感じていたからだ」と話す。実際、イスラエル人の観客が爆笑したのはイスラエル人司令官が賞味期限切れの缶詰を「うまい」とほお張るシーンだったという。両方の民族に触れて育った監督だからこそ描けた笑いのさじ加減といえるかもしれない。

エルサレムに住むパレスチナ人青年のサラームが主人公。彼は、1960年代を舞台にしたパレスチナの女性スパイとイスラエル軍将軍が登場する恋愛サスペンスドラマの制作現場で働いている。通俗的で大げさないわゆるソープオペラだが、パレスチナだけでなくイスラエルでも大人気のテレビドラマだ。サラームはドラマの熱狂的なファンを妻に持つイスラエル軍司令官と出会ったことをきっかけに、彼から無理難題を持ちかけられ、大騒動に発展してしまう。

映画「テルアビブ・オン・ファイア」のサメフ・ゾアビ監督

映画「テルアビブ・オン・ファイア」のサメフ・ゾアビ監督

同じドラマに熱中したり、アラブ生まれの豆料理ホムスに目がないイスラエル人がいたり。一方でサラームが毎日の通勤で検問所を通過しなければならない厳しい現実も描かれる。遠そうで近いが、確実に距離がある。そんな関係をゾアビ監督は、劇中劇であるテレビドラマを巧みに使いながらコメディー映画に仕立てた。

「この映画は脚本家見習いの青年の成長の旅路でもあるが、彼の背景には政治的な問題が横たわっている。それでもイスラエルを支持する観客から『サラームには成功してほしい』と感想をいわれ、印象深かった」という。「パレスチナとイスラエルの現実を扱うコメディーを作ることは大きな挑戦だった。普遍的な作品を目指したが、(作品の出来栄えが)より高い位置にいけたのではないかと手応えを感じている」と監督は話している。

(関原のり子)

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