日銀、緩和期待つなぎ留め腐心 利下げ含みの指針修正

2019/10/31 20:24
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金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田総裁(31日、日銀本店)

金融政策決定会合後、記者会見する日銀の黒田総裁(31日、日銀本店)

日銀は31日の金融政策決定会合で、政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)を将来の利下げ含みの内容に修正した。米中の緊張緩和や堅調な内需を背景に追加緩和は見送ったが、緩和に前向きな姿勢を改めて強調するためだ。限られる緩和カードは温存しながらも市場の緩和期待をつなぎ留めたい――。指針の修正にはこうした日銀の思惑がにじむ。

決定会合後の日銀の記者会見。緩和に前向きな「姿勢」と実際の「行動」がかみ合わなければ、市場から緩和姿勢を疑われるのではないかと問われた黒田東彦総裁は、「そういうつもりは全くない」と否定した。日銀は米欧の中央銀行が金融正常化路線を棚上げし、緩和路線にかじを切った7月以降、緩和に前向きな姿勢を強調してきた。

7月の会合では、2%の物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)が損なわれるおそれが高まった場合には、ちゅうちょなく追加緩和すると声明文に明記した。予防緩和の可能性に踏み込んだうえで、9月には物価動向に「より注意が必要な情勢になりつつある」として今回の会合で経済・物価動向を改めて点検すると宣言していた。

今回の会合では点検の結果、「モメンタムが損なわれるおそれが一段と高まる状況ではない」として大規模緩和の現状維持を決めた。最大の懸案である米中貿易戦争は両国の「部分合意」で緊張が緩和した。英国による欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」の懸念もひとまず遠のくなど、7~9月の会合時点と比べて世界経済を取り巻く景色が変わったことも背景にある。

それでも今回、指針を修正してわざわざ将来の利下げの可能性を明示したのは、市場の緩和期待をつなぎ留めておきたいからだ。黒田氏は会見で現在マイナス0.1%の短期政策金利を「これ以上深掘りできないことはない」と強調した。

すでに6年半にわたって大規模緩和を続けてきた日銀にとって追加緩和のハードルは欧米以上に高い。ただ緩和に後ろ向きと受け止められれば、円高や株安などを招きかねない。

そこで浮上したのが日銀の緩和姿勢が「半身」ではないことを示すための指針の修正だ。市場では「日銀はモメンタムが損なわれるおそれが一段と高まれば、マイナス金利の深掘りによる追加緩和へ動く」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との受け止めがある一方、「市場の期待コントロールの行き詰まりを覆い隠す狙い」(野村総合研究所の木内登英氏)との声もある。

日銀は市場の緩和期待を「冷やし過ぎず、高め過ぎず」の綱渡りの政策運営が続く。

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