信州大とイナリサーチ、がん免疫療法で連携 非臨床試験で新施設

ヘルスケア
北関東・信越
2019/10/31 19:00
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信州大学と非臨床試験のイナリサーチは31日、包括連携協定を結んだ。新たながん免疫療法とされる「CAR-T」などの研究施設を同社内に開設。実用化に向けて動物による効果や安全性に関する試験を始める。同大の中沢洋三教授らが開発したCAR-T療法は低コストで安全性が高いとして注目されており、両者で連携して研究開発を加速する。

包括連携協定を結んだ信州大学の浜田学長(左)とイナリサーチの中川社長

イナリサーチの本社内に研究開発センターを設けた(長野県伊那市)

長野県伊那市にあるイナリサーチの本社内に「信州大学遺伝子・細胞治療研究開発センター イナリサーチラボ」を開設した。中沢教授らが開発したCAR-T療法について、イナリサーチが得意とするサルによる試験で安全性を検証する。

31日に開いた開所式で信大の浜田州博学長は「信大として初めて学外に設置した施設。着実に成果をあげて世界の遺伝子・細胞研究をけん引する存在になってほしい」と期待を込めた。イナリサーチの中川賢司社長も「将来的に多くの研究機関などに利用してもらえるように実績を積み上げたい」と述べた。

CAR-T療法は患者から取り出した免疫細胞「T細胞」に人工の遺伝子「CAR」を組み込んで患者に戻す。免疫細胞でCARが働くと、がん細胞を認識しやすくなって攻撃力が高まる。がんの新たな治療法として世界的に研究開発競争が激しくなっている。

中沢教授らは安全性の高い材料を使って効率的に遺伝子を組み込む技術を開発。白血病などの血液がんのほか、固形がんに対しても効果的なCAR-Tの開発を進めている。

ただ、「マウスで効果を確認しただけでは実用化につながりにくい。ヒトに近いサルで安全性を確認すれば製薬会社などへの説得力も増す」(中沢教授)という。

イナリサーチは製薬会社などからの医薬品の安全性試験の受託を主力事業としている。なかでも人間に近い試験対象となれるカニクイザルによる試験を得意とする。

これまでにも、免疫反応に関する医薬品の開発や新たな移植技術の確立などに役立つと評価されているという。一般には動物実験に懐疑的な意見もあるが、同社は動物の人道的な取り扱いを推進する国際組織からの認証も受けている。

信大とイナリサーチはこれまでも「社会連携協定」を締結し、iPS細胞による心臓病の治療法開発などを進めてきた。今回、新たに包括協定を結ぶことで研究対象を広げて実用化に向けたスピードを上げる。

新たなセンターでは従来のiPS細胞に関する研究も進めるほか、信大以外の大学や研究機関、製薬会社などからの試験依頼も受け入れる方針。日本の遺伝子・細胞治療の基盤施設としていきたい考えだ。

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