米司法省、主犯格と和解 マレーシア巨額汚職事件

2019/10/31 18:41
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【シンガポール=中野貴司】米司法省は30日、マレーシアの政府系ファンド「1MDB」の巨額汚職の主犯格である実業家ジョー・ロー被告と和解し、7億ドル(約760億円)超を回収するメドがついたと発表した。回収した資産の大半はマレーシアに返還されるとみられ、45億ドル以上が不正流出した汚職事件の資金回収が進むことになる。

ジョー・ロー被告は依然、海外で逃亡を続ける=AP

司法省の幹部は30日の声明で「不正流用した資金を高額な美術品やカジノで散財していたロー被告や家族は、和解によって数億ドルを放棄せざるをえなくなった」と和解の意義を強調した。ロー被告が供出する資産にはニューヨークやロンドンの高級不動産や、米高級住宅地ビバリーヒルズのホテルなどが含まれる。司法省が1MDB関連で回収した資金の総額は10億ドルを超えることになる。

今回は民事の資産差し押さえ訴訟に関する和解だが、米当局は1MDBのマネーロンダリング(資金洗浄)などに関連し、ロー被告の刑事上の責任も追及している。司法省は今回の和解によって、ロー被告の刑事上の責任や将来の起訴が免除されるわけではないと説明している。マレーシアのマハティール首相は31日、米政府に回収した資金の返還を求める考えを明らかにした。

華人系実業家であるロー被告はナジブ前首相の側近で、1MDB資金の不正流用を主導した。マレーシアの捜査当局は複雑な資金流用の全容を解明する上でも、ロー被告の逮捕が不可欠とみて行方を追っているが、現時点で身柄を確保できてない。31日付のシンガポール紙ストレーツ・タイムズは、ロー被告がアラブ首長国連邦(UAE)に滞在していると報じた。

同事件では、60億ドルを超える1MDBの債券発行を引き受けた米投資銀行大手ゴールドマン・サックス(GS)への責任追及も焦点となっている。マレーシアの検察当局はこれまでにゴールドマンのグループ会社や現役・元幹部を証券関連法違反で起訴している。

検察トップのトミー・トーマス司法長官は10月、日本経済新聞に対し「ゴールドマンが望むなら和解への扉は開いている」と述べ、刑事責任の追及と和解の両方の可能性を探っていることを認めた。米ブルームバーグ通信によると、マレーシア当局は和解のためにゴールドマンに20億~30億ドルの支払いを求めている。

1MDB事件はナジブ前政権の腐敗を象徴する巨額汚職で、2018年5月に政権を奪取したマハティール政権はナジブ前首相をはじめ多くの前政権の関係者を逮捕・起訴してきた。マハティール政権は前政権下で膨らんだ国の負債の圧縮も進めており、世界中に流出した資金の回収は優先課題の1つになっている。

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