FRB、確信なき利下げ休止 パウエル氏「不確実性残る」

2019/10/31 19:46
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記者会見するパウエルFRB議長(30日、ワシントン)=AP

記者会見するパウエルFRB議長(30日、ワシントン)=AP

米連邦準備理事会(FRB)は30日、3会合連続の利下げに踏み切った。市場が注目したのはむしろ、当面は利下げを休止すると示唆したFRBの方針だ。個人消費の底堅さなどを理由に「予防的な緩和」を打ち止めにしたい意向だが、FRBにも確信はない。景気減速を織り込んで長短金利差の縮小が続いており、市場では追加利下げの圧力が再燃するリスクがくすぶる。

「金融政策は時間差で効くので、効果はゆっくりと雇用や物価上昇にあらわれるだろう」

パウエル議長は30日の記者会見で、7~9月期の住宅投資が7四半期ぶりにプラス圏に戻ったことを挙げて、3回の利下げの効果を強調した。これまでの金融緩和を支えに物価上昇率がいずれ目標の2%に達するとの楽観的な見通しを示した。

「予防利下げ」の根拠になってきた米中貿易戦争は部分合意への機運が高まる。英国の欧州連合(EU)離脱も来年1月まで延期され、「合意なき離脱の可能性が小さくなった」(パウエル氏)。

30日公表の声明文では、これまで利下げを示唆するために使っていた「経済成長を持続するために適切に行動するだろう」との文言を削除した。FRBは利下げ打ち止めの環境が整ったと判断した。

30日のダウ工業株30種平均は上昇し、7月に付けた史上最高値に迫った。利下げは織り込み済みで、投資家は「現時点で利上げは考えていない」と引き締めへの転換を否定するパウエル発言を買いのサインと受け止めた。

「家計債務は健全な状態だが、企業債務は歴史的な高水準に積み上がっている。引き続き金融システムを注視していく」

利下げ休止に傾くのは、金融市場のゆがみの蓄積を懸念するためでもある。長引く低金利環境で、米企業の債務残高は15兆ドル超と過去最高に膨らんだ。30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2人の地区連銀総裁が3会合連続で反対票を投じたが、理由の一つは「企業や家計の過大債務を助長する」(ボストン連銀のローゼングレン総裁)ことだった。

市場でもリスク資産が危うい活況を呈す。米低格付け社債に緩和マネーが流れ込み、利回りは5.5%と過去最低の水準に低下(価格は上昇)した。新興国の国債や株式にも再び資金が流れ込む。

国際通貨基金(IMF)のトビアス・エイドリアン氏は「金融緩和で投資家はより多くのリスクを負うようになり、金融システムがもろくなっている」と警鐘を鳴らす。緩和マネーを世界に配してきたFRBは、利下げ休止を打ち出すことで企業債務を膨張させないためのかじ取りに動く。

「経済見通しには不確実性が残る。再点検が必要な出来事が起きれば対応する」

利下げ休止を示唆したFRBだが、市場は額面通りに受け止めていない。30日の債券市場では米10年物国債利回りが前日比0.07%低い1.77%とこの日の最低水準で終えた。

1.6%程度の3カ月物国債の金利と比べて、10年物国債の利回りはほとんど差がない。3月や8月には10年債利回りの方が低くなる「逆イールド」が発生し、景気後退に陥る予兆として警戒感が広がった。足元では逆イールドは解消されているが、上昇の鈍い長期金利は景気減速への懸念が根強いことを示す。

トランプ米大統領は執拗に金融緩和を求め、FRBも「政治からの独立」を標榜しつつも結果的に利下げへと動いてきた。今後も景気の下振れ懸念が浮上するなら、トランプ氏の圧力と相まってFRBの利下げ観測が再び台頭する可能性がある。

(ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=後藤達也)

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