ファーウェイ、アリババ… 中国排除が促す技術革新
日経ビジネス

2019/11/5 2:00
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アリババ集団は半導体の開発を加速させている(写真:VCG/Getty Images)

アリババ集団は半導体の開発を加速させている(写真:VCG/Getty Images)

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IT(情報通信)が産業として立ち上がってから、米国は常に同産業の王者だった。その中でも存在感を示してきたのが、米インテルだろう。同社が開発した「x86」と呼ばれる技術体系による半導体は、パソコンやサーバーなどで圧倒的なシェアを占める。

ところが今、「絶対王者」インテルの足元を揺るがす事態が起き始めている。通信機器世界最大手の華為技術(ファーウェイ)や中国アリババ集団などが、インテル支配から抜け出すべく、異なる技術体系の半導体を自社開発し始めたのだ。

この流れを一気に加速させた出来事が、今年5月に起きた。中国IT産業をけん引するファーウェイが、事実上の禁輸対象となる米政府の「エンティティーリスト(EL)」に掲載されたのだ。ファーウェイはインテルやグーグルなど米IT大手からの調達が事実上封じられ、製品体系やサプライチェーンの大幅な変更を余儀なくされた。

スマートフォン分野においては、インテルをしのぐ企業がある。半導体設計に特化する英アーム・ホールディングスだ。自らは半導体製造を手がけず、設計開発情報をパートナー企業に提供するビジネスモデルの企業だ。技術的には省電力性能に強みを持ち、家電や携帯電話などに組み込む専用半導体では高いシェアを誇っていた。その特徴がスマホ全盛時代となった時に開花した。

だが、スマホ市場が爆発的に伸びても、IT産業の「本丸」は今もパソコンやサーバーだ。アームは米マイクロソフトと提携するなどしてパソコンやサーバー分野におけるインテルの牙城を崩そうとしてきたが、どうしても食い込めなかった。省電力性能が決定的に重要なスマホよりも性能に対する要求が高いサーバーやパソコンといった分野では、x86に一日の長があり、価格競争力もある。パソコンやサーバーのメーカーにしてみれば、インテル製半導体を買えば信頼性の高い最終製品を提供できるのに、わざわざリスクを取ってアームの半導体を採用する必要はなかった。

しかし、米国が中国に対する「デカップリング(切り離し)戦略」を加速させたことが、この状況を変えた。

■米国の「中国排除」で中国の技術革新は進む?

9月18日、ファーウェイは上海市で開催したイベント「ファーウェイ・コネクト2019」において、アームの技術を使った半導体を搭載したサーバーシステムを発表した。今後、大幅な需要拡大が期待される人工知能(AI)の深層学習用のチップで、「脱インテル」の動きを鮮明にした。事実上の禁輸措置によってインテルからのチップ調達に支障をきたすようになったファーウェイにとって、スマホ事業で緊密な関係を築いていたアームの技術体系を採用することは自然な選択と言える。

もっともサーバーやパソコンなどの製品を持つファーウェイにとって、現時点でインテルとの関係を完全に絶つことは不可能だ。クラウド&AI製品・サービス事業部門プレジデントの候金龍氏は「インテルとは競合する面もあるが、協業関係を維持する」と述べる。だが、デカップリングが深まれば深まるほど脱インテルに向かうことは確実だろう。

同様に「インテル離れ」の動きに踏み出したのが、中国アリババ集団だ。7月に独自の半導体チップを発表。こちらは「RISC-V」と呼ばれる技術体系を採用している。RISC-Vは設計情報などが公開される「オープンソース」の半導体版と言える技術体系で、使いこなせば半導体の柔軟な自社開発が可能になる。

ファーウェイ最高法務責任者の宋柳平・上級副社長は5月、米国の制裁対象になったことについて「次はあなたの会社の番だ」と語っている。明確な証拠に基づかず、中国企業であるという理由だけで米国政府から制裁を受けているとの認識で、いつどの企業が対象になってもおかしくないというわけだ。

宋氏の予言は的中した。米商務省は10月9日、ELに掲載する中国企業を大幅に追加したのだ。監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、同2位の浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)、画像認識技術で知られるセンスタイムなど計28の団体・企業が対象となった。中国が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒のウイグル族を弾圧しており、これらの企業の技術が弾圧に使われているというのが理由だ。

中国政府は覇権主義と取られることを恐れて、製造業の強化を打ち出した「中国製造2025」を声高に言うことはなくなった。だが、米国との摩擦が深まるのに合わせ、弱点である半導体産業の強化にまい進している。清華大学系半導体大手の紫光集団は中国最大の弱点とも言えるメモリー事業に本格的に乗り出すと表明した。

米国が仕掛ける中国技術の締め出し戦略は、短期的には中国の経済や企業業績にとって痛手となることは間違いない。一方で、デカップリングが長期化すれば、中国に米国とは異なる技術体系を基にした生態系ができあがってしまうこともあり得る。そうなれば、米国は中国への技術的影響力と世界最大市場を失うことになるかもしれない。「中国は危険だから排除すればよい」という考え方だけでは、もはや事態は解決できない。それほどまでに中国の技術力は高まってきている。

(日経ビジネス 広岡延隆)

[日経ビジネス電子版 2019年10月21日の記事を再構成]

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