FRB、予防利下げ休止へ 3連続緩和の効果濃淡

2019/10/31 11:28
保存
共有
印刷
その他

30日、記者会見するパウエルFRB議長(ワシントン)=ロイター

30日、記者会見するパウエルFRB議長(ワシントン)=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は30日、3会合連続の利下げに踏み切った。中国との貿易戦争のリスクを和らげる「予防的な金融緩和」との位置づけだ。ただ、パウエルFRB議長は「金融政策はほどよい位置にある」と述べ、利下げを当面休止すると示唆した。個人消費の底堅さなどを理由に挙げたが、企業心理の悪化は止まっておらず、再び緩和路線に復する可能性もある。

【関連記事】
「予防利下げ」割れた判断 トランプ氏の要求やまず
FOMC声明要旨 0.25%引き下げ、2人が反対
FRB議長「これまでの政策、経済支える」 会見全文

「米景気は底堅く、物価上昇率も2%に復するだろう。3回の利下げはこうした経済見通しを支えるものになる」

パウエル氏は30日の記者会見で、7~9月期の住宅投資が7四半期ぶりにプラス圏に戻ったことなどを挙げて、利下げの効果を強調した。米経済は過去最長の拡大局面にあるが、貿易戦争が逆風となり、下振れ懸念がにじんでいた。

政策金利の引き下げによって、長期金利は9月に1.4%台まで下がり、住宅ローン金利も約3年ぶり水準まで下がった。株価の持ち直しなども追い風となり、7~9月期の個人消費は前期比年率2.9%増え、懸念されていた内需の腰折れはひとまず回避した。

FRBはグリーンスパン議長体制だった1998年にも、景気拡大期にもかかわらず政策金利を下げる「予防利下げ」に踏み切ったことがある。アジア通貨危機による市場の混乱を和らげるためだったが、当時は経済成長がさらに2年強も持続した。パウエル現体制もその再来を狙っている。

「景気拡大は11年目に入って雇用も力強い。金融政策はほどよい位置にあると思っている。今後は経済データを引き続き見極めていく」

FRBは3回の利下げで政策金利を合計0.75%引き下げた。98年に始めた「予防利下げ」と下げ幅は同じで、パウエル氏は利下げを休止して先行きは様子見に転じる考えを示唆した。失業率は3.5%と50年ぶり水準まで低下しており、FRB内には景気失速は回避できるとの判断がある。

そのため、30日に公表した声明文では、これまで利下げを示唆するために使っていた「経済成長を持続するために適切に行動するだろう」という文言を削除した。市場も利下げの一時休止を織り込み始めており、同日の相場はひとまず冷静に受け止めた。

「家計債務は健全な状態にあるが、企業債務は歴史的な高水準に積み上がっている。引き続き金融システムを注視していくことになる」

利下げ休止に傾くのは、金融市場のゆがみの蓄積を懸念するためでもある。長引く低金利環境で、米企業の債務残高は15兆ドル超と過去最高に膨らんだ。30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2人の地区連銀総裁が3会合連続で反対票を投じたが、理由の一つは「企業や家計の過大債務を助長する」(ボストン連銀のローゼングレン総裁)ことだった。

17~18日に開いた20カ国・地域(G20)財務相会議では、米国だけでなく世界的なドル建て債務の膨張が懸念された。ある中銀首脳OBは「どの国でいつ発生するか分からないが、次の金融危機の引き金は企業債務だろう」と断じる。緩和マネーを世界に配してきたFRBは、過大債務を膨張させず破裂もさせない繊細なかじ取りが必要だ。

「経済見通しには不確実性が残る。再点検が必要な出来事が起きれば、当然対応していく」

もっとも、3回の利下げは設備投資の押し上げに効果をみせなかった。金融政策は効果が出るまで半年かかるとされるが、長期金利は利下げを織り込んで2018年秋から低下傾向にある。にもかかわらず設備投資は2四半期連続で減少し、19年7~9月期のマイナス幅はむしろ4年ぶりの大きさに悪化した。貿易戦争に端を発した景気不安は金融緩和で解消できない。

トランプ米政権は貿易戦争で中国との「部分合意」を模索するが、企業家や投資家が望む関税合戦の完全終結はみえてこない。英国の欧州連合(EU)離脱など、地政学リスクは各地に残り、中国や欧州の景気が持ち直さなければ、米経済も減速が避けられない。

トランプ米大統領は執拗に金融緩和を求め、FRBも「政治からの独立」を標榜しつつも結果的には利下げへと動いてきた。再選を最優先するトランプ氏はマイナス金利政策まで要求し始めており、パウエル体制への圧力は消えない。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]