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体育館を車いすでスイスイ 音声ナビ、パラで活躍?

2020年東京パラリンピックが近づき、障害者スポーツ大会に多くの観客が集まるようになってきた。大会関係者の多くは今後、競技会場で観戦を楽しむ車いす利用者や視覚障害者が一段と増えるとみている。心配なのは、こうした観戦客が体育館などの施設内を安全・快適に移動できるかどうか。その解決策のひとつとなりそうな案内システムが今秋、お目見えした。

JR千駄ケ谷駅前にある東京体育館(東京・渋谷)のメインアリーナ。10月の「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は3位だった日本を含む8カ国の強豪チームが連日、熱戦を繰り広げ、観客の目をくぎ付けにしていた。一方、大半の観客の目にはとまらなかったかもしれないが、会場内の天井や壁には、「ビーコン」と呼ぶ小さな無線装置が111カ所も設置され、静かに車いす利用者らを見守っていた。

ビーコンとは、スマートフォンのアプリが会場内の目的地まで利用者を誘導する「音声ナビゲーションシステム」の要になる装置だ。スマホがビーコンからの信号をキャッチし、利用者の位置を把握する。利用者は無料アプリをスマホに入れておけば、音声や地図によって目的地までの経路を知ることができる。システムを開発したのは清水建設と日本IBM。衛星からの電波を受信する全地球測位システム(GPS)とは異なり、屋内施設でも利用できるようにした。

音声ナビゲーションシステムの概要(清水建設提供)

「多機能トイレまで69メートルです」。利用者が行きたい場所を指定すると、スマホが案内を始めた。「およそ30メートル先、右に曲がる」などと、きめ細かい案内が続き、カーナビのような感覚で使える。清水建設が公開した東京体育館でのデモ実演では、車いす利用者は戸惑うこともなく、多機能トイレまでスムーズに移動していた。

「アプリの起動操作に慣れれば、使いやすい」との利用者の声もあり、システムの完成度は高いと思わせるが、課題も少なくない。ビーコンの数を減らしても正確に利用者の位置を把握できるように改良し「スピーディーに安価に設置できるようにしたい」(清水建設ICT・スマート事業部の加藤雅裕事業部長)という。施設の中と外で切れ目なく使えるようにする利便性の向上も求められる。

音声ナビゲーションシステムは商業施設での導入実績はあるものの、スポーツ大会の競技会場で使われたのは初めてだ。今回の実績を踏まえ、今後、東京都のスポーツ施設への本格導入を働きかける。システムは日本語だけでなく、英語、韓国語、中国語にも対応しているため、来年は東京パラリンピックの会場内などで外国人や障害者らの移動をサポートする場面もあり得る。

13年秋に東京五輪・パラリンピックの招致が決まってから6年。日本では大会を機に「観光立国」や「共生社会」を目指す機運が高まりつつある。実際に訪日外国人の数は急増し、障害者が外に出てアクティブに活動する機会も増えた。音声ナビゲーションシステムが本格普及すれば、観光立国や共生社会を支えるおもてなしインフラとして位置づけられる可能性がありそうだ。

(山根昭)

日経からのお知らせ 日本経済新聞社は11月19日、2020年東京パラリンピックをテーマにした第6回日経2020フォーラム「パラリンピックから見える共生社会のビジョン」を日経ホール(東京・千代田)で開催します。三菱電機の杉山武史社長、清水建設の井上和幸社長、野村ホールディングスの池田肇執行役員らが登壇。障害者が活躍できる社会に向けた企業の役割などについて議論します。申し込みは公式サイト(https://events.nikkei.co.jp/13981/)で。

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