メキシコ、「景気後退期」入り 国内外の混乱響く

2019/10/31 5:05
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【メキシコシティ=丸山修一】メキシコ経済が国内外の混乱に苦しんでいる。30日に発表した2019年7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、一般的に景気後退期に入ったとされる2四半期連続のマイナス成長となった。国内の混乱や不安定な米国との通商関係などが投資にブレーキをかけ、雇用や消費にも影を落としている。

「国内の政治的不確実性の高まりが、急激な景気減速を引き起こしている」。国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めるギータ・ゴピナート氏は15日、ワシントンでこう話した。

IMFは同日、メキシコの19年の経済成長率見通しを7月時点の0.9%から0.4%にさらに引き下げた。メキシコ銀(中銀)がまとめる民間機関の予想平均でも0.43%まで下がっている。成長率が1%を下回るのは金融危機の影響でマイナスとなった09年以来だ。

ゴピナート氏が指摘するように不振の理由にはまず国内の経済政策の混乱がある。ロペスオブラドール氏は従来政権が進めてきた民間主導型の自由主義経済を「汚職や格差の温床」として全面否定。国内外から資金を集めた首都の新空港は建設中止にし、石油鉱区の民間入札は無期延期にした。外国企業参加のパイプライン敷設計画も見直しを突きつけた。

国内外の民間企業にとっては、契約済みの案件すら簡単にひっくり返される状況に不安が高まっている。地元の有力経済団体、メキシコ経営者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デオジョス会長は「(現政権の)無計画で近視眼的な政策が混乱を招いている」と批判する。

民間企業がリスクを敬遠して投資を控えているだけでなく政府が続ける緊縮策も景気の悪化を加速させている一因だ。景気停滞で本来なら刺激策として公共投資の拡大が求められる局面だが、「歴代政権がぜいたくをし、無駄遣いをした」と批判し、支出抑制を続ける。官民の建設や設備投資の合計である総固定資本形成は1~7月で4.6%減、対内外国直接投資では1~6月で19%減だ。

こうした投資の落ち込みを生んでいる要因は外部にもある。トランプ氏によってメキシコと米との通商関係が揺らいでいることだ。1994年に発効し、米国向けの生産輸出基地としてメキシコの経済成長を支えてきた北米自由貿易協定(NAFTA)をトランプ氏は米から雇用を奪った「最悪の協定」と激しく批判して再交渉に持ち込んだ。

18年9月30日に新たな通商協定である米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)締結で合意はしたが、米、カナダで議会の批准手続きが遅れており、いまだに発効時期が見通せない状況だ。

新協定発効が見えない中でトランプ氏は不法移民対応を巡り、一時はメキシコの全輸出品目に対して関税をかけ、段階的に引き上げるとも発表した。メキシコ側の不法移民対策でなんとか関税は見送られたが、再び同様の脅しをかけてくるとも限らず「どの企業も工場などの投資には慎重な姿勢を崩していない」(日系ゼネコン幹部)のが現実だ。

ロペスオブラドール氏はいまだに成長率2%の達成は可能だと言い張り、現状の経済停滞を認めようとしない。経済成長を模索するよりも、前政権までの汚職摘発による国民の不満の"ガス抜き"に熱心だ。トランプ氏は20年の大統領選に向けて前回選挙の際のように移民や通商問題などでさらにメキシコに要求を突きつけて来る可能性もある。国内外の2人の大統領に脅かされるメキシコ経済が苦境を脱する道はまだ見えない。

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