元徴用工判決から1年 解決みえず 資産現金化に強まる懸念

日韓対立
2019/10/30 19:51
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記者会見する元徴用工訴訟の原告(30日、ソウル)

記者会見する元徴用工訴訟の原告(30日、ソウル)

韓国人元徴用工を巡る裁判で韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じる判決を出してから30日で丸1年を迎えた。日韓対立は経済や安全保障に飛び火している。日韓両首相が24日に対話を続ける必要性を確認したものの解決策はなおみえない。差し押さえている日本企業の資産を原告が現金化すれば、一段の関係悪化は避けられない。

韓国最高裁は2018年10月30日に新日鉄住金(現日本製鉄)に対する賠償を命じた。その後、三菱重工業と合わせ計3件の判決が確定した。ほかにも日立造船不二越などを相手取った複数の裁判が係争中だ。他の日本企業などを相手取った訴訟もこの間、計30件提起された。

日本政府が最も警戒するのは日本企業が保有する韓国合弁企業の株式や知的財産権が現金化されることだ。請求権問題の完全かつ最終的な解決をうたった1965年の日韓請求権協定を根本的に覆すためだ。

原告側の弁護団は30日にソウルで記者会見し、資産の現金化は来年の上半期にずれ込むとの見通しを示した。当初は年末にも可能とみていたが、資産の差し押さえ命令を被告企業に伝える書類を日本外務省が返送してきたため、手続きに遅れが生じているという。

茂木敏充外相は29日の記者会見で「現金化はあってはならない。関係はさらに深刻な状態になる」と強調した。資産が現金化されれば、日本政府は韓国政府への損害賠償請求など対抗措置をとる構えだ。

「打開のボールは韓国側にある」というのが日本政府の一貫した立場だ。菅義偉官房長官は30日の記者会見で「原因はひとえに韓国側にある。自らの責任で違反状態を是正することを求め、引き続き丁寧な対応を求めたい」と語った。

韓国政府は6月、日韓企業が自発的に資金を出して原告と和解する案を日本政府に提示したが、日本側は即座に拒否した。韓国の政府・与党内では韓国政府が関与する案も検討されている。文在寅(ムン・ジェイン)政権は日本企業が主体となって賠償金を支払わなければ原告が納得しないとみる。

日韓関係は日本による対韓輸出管理の厳格化と、韓国側が決めた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄で戦後最悪ともいわれる状況に陥った。

首脳会談は途絶えたままだ。安倍晋三首相は24日に来日した韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相と会談し「日韓関係をこのまま放置してはいけない」との認識で一致したが、対話継続の方針を確認するにとどまった。

長引く日韓関係の悪化は、文政権にとって重荷となりつつある。米朝非核化交渉や南北経済協力が行き詰まっているうえ、GSOMIA破棄を巡って米国との関係はこじれている。

韓国保守系紙の中央日報は、日本の植民地支配への謝罪を前提に「韓国政府は日本に賠償金を要求しないと宣言することを望む。韓国政府と企業が解決しようということだ」とする有識者の見解を掲載した。

日韓間では当面、外交当局や議員間の対話が続く。局長級が定期的に協議するほか、11月22、23日の20カ国・地域(G20)外相会合に合わせた外相会談を探る。11月1日には日韓議員連盟と韓国側の韓日議連との合同総会を都内で開く。

11月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議などの場では首脳同士が顔を合わせる機会も想定される。ただ、日本の外務省幹部は「今のままでは会談は難しい」とみている。(加藤晶也、ソウル=恩地洋介)

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