米動画配信競争、トトロを動かす ワーナー、ジブリ映画を配信

2019/10/30 11:54
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米国で白熱する動画配信を巡る競争が、日本を代表するアニメ作品に及んだ。AT&T傘下のワーナーメディアが2020年5月に始めるサービスの目玉の一つとして「となりのトトロ」などスタジオジブリ(東京都小金井市)の21作品を米国で配信する。これまでネット配信から距離を置いてきたジブリだが、動画の楽しみ方の急速な変化が背中を押した。

29日の発表会で「HBOマックス」の責任者はジブリ作品の配信権を得たことを強調した(写真はネット中継から引用)

ワーナーが29日にカリフォルニア州で開いた動画配信サービス「HBOマックス」の発表会。月額料金は14.99ドル(約1630円)。11月に参入するアップルやウォルト・ディズニーが月に数ドルという低価格を売りに会員獲得を急ぐのとは対照的だ。先頭を走るネットフリックスの標準プラン(12.99ドル)よりも高い。それでも、25年までに米国で5000万人の契約をめざす。

相対的に高い料金を納得してもらうために集めたのが、目を引く作品の数々だ。従来はネットフリックスでも視聴できた人気ドラマ「フレンズ」をHBOマックスでの独占配信に切り替えるほか、他社サービスにないキラーコンテンツとしてジブリの21作品を挙げた。

「(ジブリ作品は)どの動画配信サービスでも見られなかった。ジブリが僕らを選んでくれたことを誇りに思う」。新サービスの最高コンテンツ責任者(CCO)を務めるケビン・レイリー氏はこう話し、「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」といった作品を丁寧に紹介した。

アカデミー賞も受賞しているジブリ作品は米国でもファンが多く、宮崎駿監督の名前も知られる。ただこれまではDVDを購入するか、映画館で時々開かれる再上映会でしか見られなかった。

シアトルの映画館に「千と千尋の神隠し」を見に来た大学生のダニエラ・スロウィクさんは「待ち焦がれた配信がついに決まった。もちろん契約するわ」と話す。

ネット配信に消極的だったジブリが翻意した背景には、消費者の視聴行動の急速な変化がある。ジブリの担当者は「北米では動画配信が普及し、最近はDVDなどのパッケージを入手しにくくなっている」と話す。従来のように再上映会やDVD販売を重視するだけでは、新しい視聴者は増やせない。「多くの人に作品を届けるためにこのタイミングで配信を選んだ」という。

実際、アメリカ映画協会(MPAA)の調べによると、米国でのDVDやブルーレイ・ディスクの販売額は2018年で58億ドル。前年比で15%減っており、5年前の13年(116億ドル)と比べ半分に落ち込んだ。かたや動画配信(ダウンロード含む)は直近5年で64億ドルから175億ドルと2.7倍に急増した。米コンサル会社アクティベートによると、米国でネットにつながるテレビを視聴している人は2億人に迫る。

ワーナーもジブリも、契約金額などの詳細は明らかにしていない。ただ家族層をとりこみたいワーナーと、消費者と作品の新たな接点を求めたジブリの思惑が一致したようだ。

海外での動画配信に商機を見いだすのは、ジブリだけではない。日本のアニメ制作会社のプロダクション・アイジー(東京都武蔵野市)やアニマ(東京・新宿)など5社はネットフリックスと18~19年にかけて包括提携した。20年春にはプロダクション・アイジーが制作した「攻殻機動隊SAC_2045」の配信が始まる。

動画配信の世界市場は定額制のサービスだけで24年に約900億ドル規模になると見込まれる。米国ではIT(情報技術)・メディア大手からスタートアップまで入り乱れ、戦国時代の様相を見せている。日本のコンテンツ企業にとっても人ごとではない。

(シリコンバレー=佐藤浩実、篠原英樹)

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