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焦るFCA、PSAと統合交渉入り ルノーと破談から5カ月 世界4位連合で電動化投資加速

欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と「プジョー」などを傘下に持つ仏グループPSAが経営統合に向けて交渉に入ったことが29日わかった。実現すれば、世界販売台数870万台の世界4位の自動車連合が生まれる。仏ルノーとの統合が破談になってから約5カ月。自動運転や電動化といった次世代技術「CASE」投資の遅れに対する焦りが、FCAを駆り立てている。

複数の欧米メディアが関係者の話として報じた。出資比率50対50の対等合併が選択肢として検討されている。統合新会社の最高経営責任者(CEO)にPSAのカルロス・タバレスCEO、会長にFCAのジョン・エルカン会長が就く方向で調整しているという。交渉の行方は流動的で合意に至らない可能性もある。

旧フィアットと旧クライスラーを統合させた故セルジオ・マルキオーネ前CEO時代から「自動車業界には再編・集約が必要だ」というのがFCAの基本哲学だ。マルキオーネ氏を師と仰ぐエルカン会長はこの信条を継ぎ、5月に仏ルノーに統合を提案した。ルノーの筆頭株主である仏政府が首を縦に振らず白紙になったがFCAの再編への意欲は衰えていなかった。

破談後も水面下でルノーとの関係は維持していたもようだ。しかし、ルノーが日産自動車との連合立て直しを優先する方針を明確にしており、時間がかかりすぎるとみて、PSAに切り替えたとみられる。

FCAを再編に駆り立てるのは「CASE」の中でも、特に電動化対応の遅れだ。欧州連合(EU)は21年に域内の新車の二酸化炭素(CO2)排出量を走行1キロメートルあたり平均95グラム以下に抑えることを義務付けている。

FCAは18年実績に対し25%減らす必要があり、18年のままだと年28億ユーロ(約3400億円)の罰金を払わなければならない。PSAと組むことでその負担を軽減するだけでなく、車台の共通化などで電気自動車(EV)の投入を加速できる。

プジョーやシトロエンなどを傘下に抱えるPSAにとっても悪い話ではない。PSAはFCAとルノーの統合交渉前に、FCAに買収を打診していたとされる。

タバレスCEOはもともと買収を通じた成長に前向きで、17年に米ゼネラル・モーターズ(GM)から独オペルを買収。設計の共通化など徹底したコスト管理で、赤字続きだったオペルの営業損益を18年12月期に黒字化させた。

またPSAは欧州での販売が全体の8割を占め、欧州景気に業績が左右されすぎる弱点がある。タバレスCEOも問題意識を持っており、成就しなかったものの17年にはマレーシアの自動車大手プロトン・ホールディングスの買収を狙った。北米市場に強いFCAと統合すれば、投資を抑えながら欧州依存度を下げられる。

問題は本当に統合が成立するかだ。投資調査会社エバーコアISIのアナリスト、アーント・エリンクホルスト氏は「FCAとルノーとの統合より理にかなっている」と指摘する。

PSAの大株主は、創業家のプジョー家と仏政府系の金融機関、中国自動車大手の東風汽車集団がそれぞれ株式の12%強を握る。仏政府が議決権の30%弱を持つルノーと違って政府の影響力は限られるとの見方もある。中国での合弁事業が不振の東風は、PSA株を手放す意向だと報じられている。また、時価総額も200億ユーロ前後でほぼ並んでいる。

FCAはかつてGMにも統合を打診して拒否された経緯がある。新車市場が停滞する一方で、電動化や自動運転への投資は待ったなしとなるなか、統合の成否がFCAに与える影響はこれまでより大きくなっている。まずは合理主義者のタバレスCEOを納得させる条件を示せるかが注目される。

(フランクフルト=深尾幸生、パリ=白石透冴)

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