今日も走ろう(鏑木毅)

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好きなことを仕事に 人生は一度、覚悟持って挑戦

2019/10/31 3:00
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先日、数年前に転職した友人に会った。彼は学生時代に陸上競技の選手で、公務員として20年ほど勤めながら、ボランティアで選手指導に情熱を燃やしていた。より高いレベルで指導したいとの思いから仕事を辞し、学校の指導者となった。

成果を求められる立場ゆえ、彼はうまくいっているだろうかとずっと気がかりだった。だが以前と変わらず、いやむしろ生き生きとしている姿に心底ほっとした。彼が言うには、もちろんプレッシャーもストレスもあるけれど基本的に好きなことにかかわれる喜びの方が勝っているという。

私自身も40歳で公務員をやめ、好きなトレイルランニングにかかわる仕事を選んだ。これが人生の選択として正しかったかどうかはなかなか判断が難しい。

群馬県でスパトレイルという大会をプロデュース

群馬県でスパトレイルという大会をプロデュース

確かに好きなことが仕事となったおかげで、サラリーマン時代のストレスは軽減したものの別の悩みも出てくる。それは心が安らぐ瞬間がないことだ。経済的に安定しなければというプレッシャーもあるけれど、それ以上にいつも何かに追われているようで常に気が急いている。

つまりは好きだからこそ、のめりこみ過ぎて妥協できず苦しむのである。この10年で何度も心が不安定になったことがある。ずっと憧れていたこの道なのだが、思いもしない落とし穴があった。

好きで取り組むといったスタンスで仕事に携われるのは幸せだが、生活のために働いていたサラリーマン時代は勤務時間さえ終われば、心配事があったとしても基本的に心は解放感に包まれた。時折、あの頃が無性に懐かしくなる。今は仕事を完全に忘れることなど片時もない。自ら起業した人などはおそらく同じような心理状態ではないだろうかと察する。

さまざまな立場の人から、私のようにプロになる道はどうだろうかと相談を受けることがある。現在の仕事に対する不満が転職の動機の根底にあるのならば、それはやめた方がいいと伝えている。

とはいえ、私自身はこのスポーツが好きだからこそ全エネルギーを傾けることができ、大きな障壁を何度も乗り越えることができたのも確かな事実。たとえば、私は生来コミュニケーション能力が十分とはいえず、さまざまな人々と折衝し組織や大会を立ち上げていくいまの仕事など、サラリーマン時代の自分には想像もできなかった。自分の中に眠っていた能力を呼び起こすことができたのは好きなことに携わっているからこそだろう。

近年は終身雇用制が崩れつつあり、キャリアアップのための転職や、キャリアを生かせる副業など、労働への考え方自体が柔軟化し多様化している。今までなら好きなことはあくまで趣味の枠にとどめて仕事は別、という意識が社会全体にあった。これも少しずつ変わりつつあるようだ。軽挙は戒めたい。しかし人生は一度きり。好きなことを仕事にしたいという揺るぎない覚悟があり、先の展望を十分予測し、リスクを取れる気概があるのであれば挑戦する価値は大きい。

(プロトレイルランナー)

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