中東産油国、成長率を大幅下方修正 19年0.7%に

2019/10/28 21:45
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サウジアラムコの石油施設は何者かに攻撃を受けた=ロイター

サウジアラムコの石油施設は何者かに攻撃を受けた=ロイター

【ドバイ=木寺もも子】国際通貨基金(IMF)は28日、サウジアラビアなど中東産油国6カ国の2019年の実質成長率見通しを0.7%と、4月時点の2.1%から大幅に引き下げた。サウジは0.2%の成長にとどまる見込み。世界全体では3%成長すると予測しており、中東産油国の低迷ぶりが目立つ。原油依存の経済構造のもろさが露呈した形で、イラン情勢など地政学リスクも先行きに影を落とす。

IMFはサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、バーレーン、オマーンの6カ国の産油国についての19年の成長率見通しを公表し、4月時点から1.4ポイント引き下げた。一方で、世界全体では0.3ポイントの下方修正にとどまった。

域内で最大の経済規模を誇るサウジの19年の成長率は0.2%と、4月の1.8%から引き下げた。サウジが主導する石油輸出国機構(OPEC)と非加盟のロシアなどが組んだ「OPECプラス」は供給を絞り込んで価格引き上げを目指す協調減産を続けるが、サウジなどが財政を均衡させるのに必要な価格水準には届いていない。

原油は需要が世界的に伸び悩み、価格が低迷している。19年のサウジの石油部門の成長率はマイナス3.1%の見込みと、6カ国全体の水準(マイナス1.4%)を大きく下回る。原油価格低迷の影響はサウジに大きくのしかかる。

9月には国営石油会社サウジアラムコの重要石油施設が何者かの攻撃を受け、サウジの原油供給能力は一時大幅に低下した。この影響でアラムコは上場計画の公表の延期を余儀なくされたとの報道もある。

原油価格の国際指標である北海ブレント原油先物は足元で1バレル60ドル台前半と、80ドルを超えた18年のピーク時から2割下げた。IMFの地域担当、ジハド・アズール氏は「米中間の貿易戦争などの影響で需要が低迷していることや米国のシェールオイル生産量の増大が原因で、中期的な原油価格は下落が続くだろう」と説明する。

中東産油国では原油に依存しない経済構造への転換を進めている。サウジは脱石油依存を掲げ、外資の積極誘致に動いている。ただ、非石油部門の成長率は2.7%にとどまる見通し。6カ国全体でも非石油部門は2.4%の成長見込みで、IMFは「増え続ける労働人口を吸収するには(成長の)スピードが足りない」と分析する。

ネックとなっているのが、脱石油化に不可欠な外国直接投資(FDI)の伸び悩みだ。脱石油改革の旗を振るサウジでは10~14年、FDIが国内総生産(GDP)比2%超だったのに対し、15~18年は1%未満にとどまった。

6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)では若者への技術教育の拡充や就業意識の転換といった人材育成の遅れによって労働生産性が低下、潜在成長率を押し下げる状況が続いている。さらに、イラン情勢を巡る緊張で先行きの不透明性が高まっていることも、外国企業が投資を手控える要因となっている。

6カ国の中では、液化天然ガス(LNG)生産が世界最大級のカタールは19年に2%の成長が見込まれる。環境保護の機運が世界的に高まり、石油よりも環境負荷が低いとされるLNGの需要は高まっている。カタール経済にとっては追い風となっている。

ただ、同国を巡っては、サウジなどとの関係が悪化し、断交する事態に発展している。イラン情勢が緊迫し、ホルムズ海峡が封鎖される事態に発展すれば、同国にとっても影響は大きい。イラン情勢を中心とする地政学リスクから中東産油国は逃れることができず、経済成長を阻害する要因であり続けている。

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