【ワシントン=永沢毅】過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者バグダディ容疑者の死は、トランプ米大統領にとって2020年の米大統領選への大きな成果となる。シリア北部からの拙速な米軍撤収方針が招いた国内外からの批判を払拭し、中東政策の失地回復につなげたい考えだ。
「米国と世界にとって偉大な夜だった。多くの死をもたらした残虐な殺人者が排除された」。トランプ氏は27日、ホワイトハウスでの記者会見で強調した。質疑応答を含めた会見時間は約50分に及び、同氏の高揚ぶりがいつになく目立った。
トランプ氏はシリア政策で迷走を重ねていた。とりわけ10月は米軍撤収の公約実現を急ぐあまりトルコのシリア侵攻を招き、IS掃討で連携してきたクルド人勢力を危険にさらす失態を犯した。シリア北部からの撤収方針は二転三転した末、油田保護の名目で駐留を続けることになった。
それだけにIS掃討の進展をアピールし、撤収の正当化にもつながる今回の作戦成功はトランプ氏にとって大きい。トランプ氏に批判的な米主要メディアも、この日は評価する論調が目立った。
一方、作戦実施を事前に伝えられなかった野党・民主党のペロシ下院議長は声明で「下院は作戦に関して説明を受ける必要がある」と求めた。