/

シリア安定なお見通せず、米が指導者殺害 米軍撤収の加速も

【エルサレム=飛田雅則】トランプ米大統領が27日、過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者、バグダディ容疑者が米軍の軍事作戦で死亡したと明らかにした。米国の「対テロ戦争」の転機となる。トランプ大統領は自身の成果として、公約であるシリアからの米軍撤収を一段と進める可能性もある。ただ、シリアではIS以外にも複数の武装組織が活動しており、シリアの安定はなお見通せない。

(1面参照)

27日の記者会見で、トランプ氏はシリア北西部のイドリブで実行した作戦について「特殊部隊が犬で洞窟の奥まで追い詰め、(バグダディ容疑者は)犬のようにおびえ、最後は自爆した」と述べた。現地でDNAを採取し、本人と確認したという。同容疑者の3人の子供も死亡した。

米大統領が自ら軍事作戦について、ここまで詳細で刺激的な表現で語るのは極めて異例だ。

トランプ氏は2020年の大統領選で再選を目指すが、ウクライナを巡る疑惑で弾劾調査が始まり、外交面では北朝鮮との非核化交渉は膠着状況に陥っている。シリアからの米軍撤収はトランプ氏の主要な公約の一つだが、撤収を進め、シリアの混乱を深めたとの批判も米内外で出ている。バグダディ容疑者の排除を自身の功績として最大限にアピールする狙いがある。

死亡したバグダディ容疑者は14年、シリアとイラクにまたがる広大な地域を支配し「国家樹立」を宣言した。面積は15年時点で日本の国土より一回り小さい約30万平方キロメートルに広がった。シリア北部ラッカを「首都」と定め、イスラム法に基づく統治を始めた。

サウジアラビア王室をはじめとする現在のアラブ諸国の権威主義体制を「本来のイスラムから離れた堕落だ」と批判したISの主張はインターネットを通じ世界に発信された。経済格差に不満を持ち、疎外感を抱えるアラブ諸国や欧州などの若者らが3万人以上、戦闘員としてシリアやイラクに渡った。

その後は米軍が支援するクルド人主体のシリア民主軍(SDF)などの攻撃を受け、勢力圏は徐々に狭まっていた。17年10月にラッカを放棄しており、指導者を失ったことでISにとっては壊滅的な打撃となる。

しかし、ISの掃討だけでシリアが安定するわけではない。IS以外にも複数の軍事組織が活動しており、その時々の利害関係に応じ、合従連衡を繰り返している。中東では経済格差や権威主義的な政治体制への不満など、過激派の思想が浸透しやすい素地がある。武力だけでこうした過激派組織を根絶するのは難しく、ISに代わり、ほかの過激派組織が台頭する懸念もある。

トランプ大統領は今回の軍事作戦でロシアやトルコ、クルド人勢力などの協力があったと明らかにした。シリアは米国や欧州、ロシアなど各国の思惑が絡み合い、利害は一致しているわけではない。過激派の台頭を防ぐため、新たな枠組みを構築する必要がある。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン