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日本ハム・小笠原コーチ誕生、清宮に侍魂伝わるか

編集委員 篠山正幸

侍の魂が、日本ハム・清宮幸太郎の飛躍をもたらすか――。中日の2軍監督を退任、14年ぶりに古巣に復帰し、ヘッド兼打撃コーチとなる小笠原道大さん(46)は現役時代、「言い訳無用」といった「剛の者」の香りを漂わせ、独自の境地を開いた人。技術以上に大切な学びのポイントがありそうだ。

来季からヘッド兼打撃コーチに就任する小笠原道大さん(右)と日本ハムの栗山英樹監督=共同

小笠原コーチは左のスラッガーとして日本ハム、巨人、中日で活躍。19年間で2120安打(歴代29位)、378本塁打(同25位)、1169打点(同27位)の成績を残した。2015年限りで引退し、16年から中日の2軍監督を務めていた。

自分で自分の形を探せ

指導者としては手取り足取りというタイプではなく、選手が自分で課題を克服していくのを見守るというスタイルのよう。

指導者になりたてのころ「第2の小笠原道大を作ろうとは思ってない。自分の打撃は自分だからできたことで、全部をそのままコピーして、一人のバッターを作ろうとは思っていない。選手それぞれにオリジナリティーがあって、その良さを伸ばしてあげるのが理想」と話していた。

結局は選手自身がもがき、自分で自分の形をつかみとるしかない、という哲学は自身の経験から得たものらしい。

千葉・暁星国際高からNTT関東を経て、日本ハムに入団したときは、ある程度バットが振れるという自信があったという。ところが、キャンプでフリー打撃に臨むと、打球が内野を越えなかった。

それでも当時の加藤秀司打撃コーチらはただバットを振れ、というばかりで1週間から10日間近くは黙ってみていたという。

その後、多少の技術指導もあったらしいが、コーチがむやみやたらに手をさしのべなかったことにより、プロはバットを振り込み、自分で考えるしかないんだ、という自立心が養われた。プロの入り口で、この基本姿勢をたたきこまれたことが、野球人生において決定的だったという。

今季の清宮は骨折で出遅れ、81試合出場にとどまった=共同

やることやってダメなんだから…

おそらく、新たに「小笠原門下」に入る清宮らにとって、学ぶべきはスイングの形や理論もさることながら、「気」の問題ということになってくるのではないか。

現役時代、三振をしてもうつむかず、顔を上げてベンチに戻る姿が印象的だった小笠原さん。以前、その胸中を聞いてみると「言葉にするとアレなんだけど、やることやってダメなんだから文句あるかっていう……。次に打てばいいだろ、と」との答えが返ってきたものだった。

言い訳が意味をなさない世界。好機で凡退して、頭を下げたり、ボールと思った球をストライクにとられた、というような態度をとったりしたところで、許されない。ならば、次からの打席で取り返すのみ。そんなプロの厳しさに正面から向き合えばこその、堂々たる凡退の姿だった。

当然ながら、その裏には次は打てるという自信と、それだけの練習はしてある、という自負があった。その場しのぎの開き直りではなく、そこに06年から07年にかけて、日本ハムと移籍先の巨人で最優秀選手(MVP)に輝いた優勝請負人の勝負強さの源があった。

まさに侍。その生き方こそ、清宮らの最大の教材ではないか。

プロ2年目を終えた清宮。高校(早実)を出て1年目から7本塁打を放ったこと自体、非凡な才能を示しているし、今季もオープン戦での右手有鉤骨(ゆうこうこつ)骨折という出遅れがなければ、出場81試合、7本塁打という成績にはとどまっていなかったはずだ。

だが、当初の期待の大きさからすれば、到底物足りず、自分自身も納得できていないはず。時のたつのは早く、大器、大器といわれながら未完のままに終わってしまう人が少なくないのも、プロの世界の常だ。

最初からスターとして入団した清宮が、たたき上げの小笠原新コーチから学ぶものは多い=共同

育ちの良さからくる淡泊さ、一皮むけるか

凡退時の清宮も、さばさばしていて、そこに大物の雰囲気が漂うこともあるが、それは小笠原さんのように自分をぎりぎりまで追い詰めた結果の「さばさば」ではなくて、育ちの良さから来るもののようにも思われる。もっとガツガツしたものが、出てきていいのではないか。

清宮がもう一皮むけるために必要な何か。その何かは、ひょっとすると、最初からスターとして入団した清宮とは対照的な軌跡を描く、たたき上げの人の道をたどったところで見つかるかもしれない。

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