米財政赤字1兆ドル時代 「双子の赤字」再び強まる

2019/10/26 20:53
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トランプ大統領は貿易赤字の縮小を切望している=AP

トランプ大統領は貿易赤字の縮小を切望している=AP

【ワシントン=河浪武史】米財務省が25日発表した2019会計年度(18年10月~19年9月)の財政赤字は9840億ドル(約107兆円)と7年ぶりの水準に悪化した。20年度以降は赤字額がさらに膨らむとされ、財政赤字は「1兆ドル時代」となる。過去最大のモノの貿易赤字とともに「双子の赤字」の色彩が強まり、中長期的にはドル相場など米経済・市場のゆがみをもたらしかねない。

19年度の歳出は国防費の積み増しなどで8%増え、財政赤字も前年度比26%拡大した。トランプ政権と連邦議会は17年末に10年で1.5兆ドルという大型減税を決定。過去最長の景気拡大局面にもかかわらず歳入は伸びず、財政赤字は4年連続で悪化した。

米議会予算局(CBO)は20年度の財政赤字額を1兆80億ドルと予測する。赤字幅はその後も広がり、28年度には1兆4790億ドルに膨らむと試算する。トランプ政権と連邦議会は8月に20、21年度の歳出を合計3200億ドル積み増す予算関連法を成立させたばかりだ。CBOの予測は景気拡大がさらに続くという前提だが、赤字額は08年の金融危機直後並みに悪化しそうだ。

もっとも、米10年物国債利回りは9月に一時1.4%台と、2%弱とされる潜在成長率を大きく下回る水準になった。米財務省は低金利環境を超長期国債の好機とみて、これまでなかった50年債と100年債の発行を「真剣に検討している」(ムニューシン財務長官)。経済成長の底上げへインフラ投資などを求める声が経済界、学界からも上がっており、政界も共和党、民主党ともにもう一段の財政支出に前向きだ。

ただ、米連邦政府の利払い費(利子受け取りを含むネット)は低金利にもかかわらず3760億ドルと16%も増え、CBOの予測では28年度には7580億ドルとさらに2倍に膨らむという。トランプ氏は「米連邦準備理事会(FRB)が政策金利をゼロにすれば、政府債務の利払いが減る」と主張。低金利が財政の生命線とみて、露骨に利下げを要求する。

米国は18年のモノの貿易赤字が過去最大になった。経常赤字も10年ぶりの水準に悪化しており、米経済は再び「双子の赤字」の色彩を強めている。好況時は消費や投資が活発になって貿易赤字は増えやすいが、本来は税収が伸びて改善するはずの財政も悪化するのは異例だ。米経済は世界最大の純債務国だが「双子の赤字」が強まれば、不足するマネーを海外からさらに取り込まなければならない。

1980年代のレーガン政権下でも、大型減税で内需が過熱して双子の赤字が発生した。経済のゆがみは日米貿易摩擦などに発展し、最終的にはドル高是正へ日米欧の「プラザ合意」という荒療治を余儀なくされた。トランプ氏も貿易赤字の縮小を切望しており、政権内で異例のドル売り介入論が浮上するなど、通貨高の是正に駆られやすい状況だ。

双子の赤字の解消には、本来は米国の過剰消費と過剰投資を改める必要がある。ただ、国際通貨基金(IMF)は19年の世界経済の成長率見通しを、危険水域に近い3.0%まで引き下げた。世界景気をけん引する米経済が財政・金融で引き締めに動ける状況にはなく、17~18日の20カ国・地域(G20)財務相会議でも財政再建論や金融引き締め論を封印した。世界経済はひずみを抱えつつも、米国の財政拡張路線に寄りかかったままだ。

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