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希代の演出家・蜷川幸雄追悼 ゆかりの劇団が総力公演

蜷川幸雄の人生が朗読と寸劇で構成された舞台(宮川 舞子撮影)

演出家、蜷川幸雄が亡くなって3年半、その面影をしのぶ公演が誕生日(10月15日)を期して開かれた。故人が芸術監督をつとめた彩の国さいたま芸術劇場で、ゆかりの2劇団が総力挙げて上演した「蜷の綿」(藤田貴大作)は、演劇の継承を強く印象づける舞台だった。演劇人がこのような形で追悼されるのは珍しい。

10月13日から3日間上演されたこの作は蜷川の人生そのものを描く。本紙連載の「私の履歴書」(「演劇の力」として刊行)や作者のインタビューをもとに構成された実録的演劇だ。依頼主の本人が2016年2月に演出する予定だったが果たせず、3カ月後に世を去った。遺志をつぎ朗読劇として演出したのは演出補として長年現場を支えた井上尊晶で、劇場専属の高齢者劇団さいたまゴールド・シアター、若手俳優劇団さいたまネクスト・シアターが結集した。

言葉の応答で、蜷川幸雄の内面の葛藤を描く(宮川 舞子撮影)

死者が幽霊としてよみがえる夢幻能の手法で演出された舞台で、老若の言葉の応答が故人の言葉を浮かび上がらせる。鋳物の街、埼玉県川口市で兄、友人、恩師らと交わりながら、秀才として孤立感を深める少年時代。商業演劇進出に際し劇団員から糾弾される演出家としての成長期。「世界は、おれだ」「おれは、世界だ」という言葉をリフレインさせながら、自意識が外部の世界と格闘するドラマが浮かび上がった。

作者の藤田は蜷川の50歳下。日常の「小さな世界」をリフレインの手法で劇化し、注目される。対して「大きな世界」を描こうと努めた蜷川は対極にある藤田の舞台をみて、過剰なまでの自意識という点で共通の感覚を見いだしたようだ。世代を超えた共感から発した作品づくりの舞台裏は、近刊「蜷川幸雄と『蜷の綿』」(河出書房新社)に収録された戯曲とインタビューでたどることができる。

(内田洋一)

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